社員に感情的に好かれようとして経営者として大失敗した話

組織/仕組みづくり
組織/仕組みづくり

経営者としての立場、役割が全くできておらず、経営者でなく個人の感情を優先して社員と接したことによる大失敗について書いています。弊社の社長がいなくても回る強い組織、仕組みをつくる「01組織クラウド」のユーザーの経営者にもよくある大失敗ですので、是非、同じ轍を踏まないように貴方はお気を付けください。

社員に嫌われたくないが会社を弱くしていた

かつて弊社に在職していた社員にこんな人がいました。

・私語ばかりして仕事を全くしない
・仕事の言い訳ばかりする
・他社員の悪口を平然と言う
・ケアレスミスばかり
・ミスを指摘し改善を促してもなおらない
・プライドが異常に高い
・モチベーションが出ないとやたら言う

当時の僕は、この社員が全く会社の目標に対して、仕事としてパフォーマンスを出していないことに不満やストレスを感じていました。しかしながら、厳しいことを言うとこの社員に嫌われてしまうのでは?という個人の感情が邪魔をして、厳しいことを言うことができませんでした。これは何となく仲の良い会社でありたいという僕の個人的な漠然としたイメージもありました。

もっとよくないことに、ただ厳しいことを言うことができない以上に、この社員に結果として好かれようとしていて、パフォーマンスは一切出ていない、むしろ相当に悪いのに、昇給したり、褒めるという真逆のことをしていました。 完全に対応を間違えて、この社員の明らかによくない状態を1年以上黙認することをしてしまいました。加えて、自分の悪手によって、その期間中はどんどんストレスを増していました。

また、この社員1人の問題であればまだよいのですが、この社員は周りの社員を巻き込んでしゃべったりすることや、他社員の悪口を言うため、他の社員が嫌な思いをしたり、モチベーション、モチベーションと言うため僕が間違えてモチベーションをあげてあげようという無駄なことをしたり、会社全体で生産性をとても落としていました。

会社全体がとてもだらけた、緩い、生産性の低い組織になってしまっていました。

今考えると本当にダメな会社だったなと思いますし、そんな状態の会社が自分の会社だったなんて信じたくありません。

経営者としてでなく、個人の感情が優先してしまった

これは、経営者として会社の成長を考えて自分がどうしないといけないのかという視点よりも、社員に嫌われたくないという目の前の個人としての感情に負け続けたことが最もな原因です。 今、振り返って、考えても、自分に経営者としての真剣さ、覚悟がなかったことがとにかく悔しいです。当時のような状況がなぜ起きてしまったのか、反省を踏まえて、原因とその後の対策をご説明します。

経営者としての自覚がなかった

そもそも経営者としての自覚がまるでありませんでした。経営者とは一体何なのか?その役割、責任を理解していませんでした。そのため、経営者としての判断、見方なんてことはなく、個人としての自分の判断、見方しかありませんでした。個人の判断、見方も自分に甘いため、自分が好かれる、嫌われたくないとなってしまい、上記のような事態を引き起こしていました。ワンマン社長の典型的な状態だったわけです。

経営者としての覚悟がなかった

経営者としての自覚がなかったので、覚悟はもちろんありませんでした。何となく仲良しクラブみたいなものに憧れていたわけです。

明確な目標設定がなかった

目標設定というのは、年間の売上目標などはもちろんありました。しかし、それを月間に落とし込んで、チームとしてどうするのか、社員個人はどうするのか、それらができたとき、できなかったときにどのように評価をするのか、そもそも目標に対しての考え方などをきっちりと整備、ルール化することができていませんでした。そのため、日々の仕事の前提になるはずの目標が実質不在という状況がありました。

しかも、状況を悪くしたのが、何となく会社全体の売上目標は良い感じで推移していたので、それが全員目標を達成している、目標を達成していなくても良いという、社員1人1人の単位での目標と結果の突き合わせをとても曖昧にしていたことがありました。

合わせて、社員1人1人の明確な目標を設定すると、嫌われるのでは?という気持ちもありました。厳しい会社だと思われてしまう、目標とかを各自に与えることは何となく嫌われそうだなと思っていたわけです。僕自身が目標を曖昧にすることで、社員に逃げ道をつくっていて、それが良いことだと思っていたわけです。

各社員の人事評価をしていなかった

上記のような状況でしたので、社員の評価というのも、とても曖昧で、建設的なものではありませんでした。嫌われたくないという感情が先行しているため、明らかにできていないことがあっても注意などあまりできず、褒めることばかりで社員を完全に勘違いさせてしまったと思っています。

大きな反省があり経営者に変わる契機が

上記のような原因があったわけですが、

・会社の成長が以前に比べて止まってしまっていること

・何かが明らかに間違えていることなどは薄々気が付いていたこと

・外部環境によって会社をどうしていくのか?真剣に考えないといけない状況になったこと

・もっと会社の成長に真剣にコミットをしていかないといけない

・これまでの中で自分ができていないことが最も現在の悪い状況を生み出しているのでは?

このように考え、自分の役割=経営者の役割とは何なのか?経営者として自分がやらなければならないことは何なのか?を考えました。

経営者の役割が腹落ちでき経営をしはじめる

経営者の役割についてですが、経営者は会社の中の1つの役割だということに気が付きました。

自分個人の好き嫌いではなく、そもそも会社というのは1つの生き物であり、目指すゴールを持っている生き物であって、その舵取りをしている役割が経営者だと。

そのように考えたときに、自分の存在=会社ではなく、自分も会社の一員であり、会社という生き物を正しい方向に導いたり、ゴール達成にコミットすることが経営者の役割だと思えるようになりました。それが自分の役割だと。

また、仮に自分が嫌われなかったとしても、会社がうまくいっていなければそれはもっと嫌なことであることも自分の中で確認をしました。このことによって、自分の客観的な役割として経営者をしており、経営者は会社の目指すゴール達成に最もコミットをしている1つの役割であって、会社の成長が自分の中でも最も重要なことだと腹落ちできたわけです。

自分の中で、経営者としての役割を理解、腹落ちできたことで、明確に自分の中でパワーが沸いてきて、一気に変わるために歩を進めることができました。自分という個人がどうこうでなく、経営者としての役割に徹することが自分の仕事だと思えたわけです。

会社の考え方を明確にし全社員に伝えた

まず最初にしたことは、改めて会社が目指していることを言語化しなおしたり、解像度を高めました。こういう世界を実現するために、こういう目標、方法でやっていくということから、これまではこうだった(上記のように目標が曖昧だったり、パフォーマンスが低い人がいたことなど)ことに対して、自分自身が全然できていなかったことをまず最初にお詫びし、会社の悪いところを一掃していくということを伝えました。

今までと変わる部分がとても多いので、完全に第2創業ですという言い方で、進んでいくスピード、求める仕事のレベル、曖昧さを一切排除することなど、これまでとは明確に変わること、その変化を具体的に示し、もしついていけないと思ったらここで船を降りてもらって構わないということを伝えました。社員に自分自身のキャリアを真剣に考えて、自己決定してほしいと。

「会社というのは1つの生き物で、目的、目標を持っています。その実現のために、僕をはじめ、社員もいる構図であって、社員のために会社があるわけではありません。会社の目的、目標、それを実現するための実際の戦略、仕事の基準など、会社が決めていることに対して、納得し取り組める人だけ残ってください」と。

もちろん社員にとって晴天の霹靂になってはいけないので、このことを一度限りでなく、毎月の全社ミーティングなどで1年近く言い続け、また、個別ミーティングでも、会社の新しい考え方にフィットしていなさそうな人に対しては特に問うようにしつつ、改善を促したり、転職するなどの選択の時間を取りました。

社員1人1人の目標を明確にした

上記の前提がありつつ、徐々に実際の仕組みを変え始めました。今までとても曖昧になっていた、仕事の責任の所在、1人1人の社員の目標などを明確に設定をしました。(もちろん理不尽な目標設定などになるわけはありません。)この目標設定を明確にすることによって、言い訳を許さない、できない環境をつくることができました。

今までは様々な仕事をお願いしてしまって、できない理由=言い訳となる原因を僕が作ってしまっていました。

そのため、「貴方の役割は●●で、●●以外の仕事はお願いしないので、●●において自ら目標設定した月次の目標ができないということは良くないことですよね」という共通認識をつくりました。

このことによって、1人1人の社員の仕事ぶりが明確な結果になって見えるようになりました。目標をしっかりと達成しようと努力する社員がほとんどでしたが、目標を当たり前のように未達し続ける社員も出てきました。冒頭の社員は月次の目標をずっと未達の状態が続くことになりました。

ルールを明確につくった

さらに、人事評価の仕組みも明確にしました。(人事評価以前に、会社の最も重要な考え方、価値観などは事前に伝えているので、その考え方に合わない人はその時点で転職などを視野に入れてもらうか、会社の考え方に合わせてもらうことをしています)

特に、今までは昇給の方法のみだったものを、明確に減給があること、その条件を追加しました。この減給の設定は、会社としてのゴールを達成するために社員として最低限できていないと会社にとってマイナスになることを明確にしたわけです。

また、昇給についてはある意味当たり前なのですが、個人として頑張った人を結果で評価する仕組みにより一層変えました。

社員に対して迎合していたかつての状態から、会社の成長のためにあるべき姿を考えて、客観的にそれら(会社の考え方、価値観、目指すところ、働き方、目標の考え方などなど)を言語化し、ルール化したことによって間違いなく良い方向に変わりました。

この文書だけみると、社員にとってマイナスの変更のように思われるかもしれませんが、実際は異なります。成長意欲のある、会社にとって最も重要で、評価をしてあげるべき社員にとっては、仕事を通じての成長が加速され、今までより高い評価がされるようになります。実際にこの変化の前後で残っている社員は全員、当時と比べて大きく昇進、昇給を実現しています。

ただ、会社にとって大切にしている考え方、価値観、行動ができていない社員にとってはとてもいにくい会社となりました。ただ、それはある意味で仕方のないことで、明確なルールができたことで、社員にルールに合わせてもらうということができるようになったわけです。このルールを尊重できるか、守ることができるか。とてもシンプルな基準ができたわけです。

経営者が社員を大切にするということはどういうことか

経営者も経営者という役割をやっているだけであって、経営者は会社のゴールに対して最もコミットをするべき役割です。社員を大切にしないということではもちろんなく、社員を大切にするということは実際にはどういうことなのかをしっかりと自分なりに考えを持つことが大切です。僕の場合には、かつては、僕が感情的に嫌われないことが大切にすることだったわけですが、今では社員が圧倒的に人としてビジネスマンとして成長することを支援することが社員を大切にすることだと思っています。

経営者自身が自分の好き嫌いで経営、意思決定、判断をしているのではないということ、つまり、明確な考え、ルールがあって、そこに則って、経営、意思決定、判断をしているという状態に変えることができると、自分が嫌われるかどうかということにならず、前提として、考え方、ルールを社員に伝えて、そこをしっかりと理解して入社、働いているのであれば、お互いとてもスムーズな理解、やりとりができるようになるわけです。

経営者もただの役割なんだということ、考えを言語化、具体化して、ルールに落とすことがいかに大切かということです。