効果的な社員研修、社員教育の作り方

社員研修/教育
社員研修/教育

社員の学び、成長段階に合わせて社員研修、教育を設計する

社員への研修、教育を考える上で知っておくとよいのが、「人の学びには段階がある」ということです。

スイスの心理学者、ジャン・ピアジェは、子どもは成人としての最終的な段階に達する前に感覚運動段階、前操作段階、具体的操作段階、形式的操作段階の4つの段階を経る、発生的認識論を提唱しました。

ジャン・ピアジェは、0歳の子どもから11歳になるまでの発達過程を整理したのですが、これは子どもに限らず、成人であっても初めて行うことを覚えるには、同じような4つの段階を経て学習していきます。

発達の速さや達成度合いには個人差があります。

しかし、発達段階は突然飛び越して変異するのではなく、徐々に変わります。この徐々に変わる部分が、繰り返し実施するとことで習得される、トレーニングの要素になるのです。

トレーニングについては、なぜ社員教育をしても業績が変わらないのかも合わせてお読みください。

社員研修、教育の効果を出すために社員の現状を把握する

ただ、社会人は全くの子どもとは異なるので、個人で身に付けている能力に差が生じます。

Aさんは、1.感覚運動段階の状態で入社してきたが、Bさんは具体的操作段階からでも仕事ができるということも起こるでしょう。この部下の能力によって、身に付けさせたいことも様々と変わります。

そこで、知識トレーニングであれ、技術トレーニングであれ、トレーニング内容を考える場合は、指導者は部下に対して次の2つを把握する必要があります。

社員の現状

何が出来ていて、何が出来ていないのか、現状を確認します。

社員の目標設定

部下に、いつまでに、何が出来るようになるのか目標を設定します。多くの指導者は、一番最上階のスキルを示します。

例えば、

・トップセールスマンになって欲しい

・経営者の右腕のような仕事をして欲しい

など…

しかし、入社間もない人がそのような目標を設定されたらどうでしょうか…

少々、荷が重いと感じてしまいますよね。

なので、目標設定も段階的に設定することが大事なのです。まずは、直近1カ月の目標とか、半年後の目標とか、部下が想像できる範囲で目標設定をすることが大事です。

ギャップを埋める研修、教育内容

目標が設定出来たらかといって、行動が出来るとは限りません。その目標を達成するには何をしなければならないのか、取り組むことも明らかにする必要があります。

その取り組み内容を社員に任せてしまっては、指導者の思うような成果が現れません。社員の現状から求めるスキルになるまでに、どのような仕事をどれだけの回数(期間)行うのか、社員と一緒に計画書を作成します。

社員はこの計画書を参考に、今後自分が何をすべきか自覚でき、自主的に行動することも可能になります。

社員研修、社員教育の作り方の実際事例

ここからは、事例を使いながら社員研修、社員教育の考え方を説明します。

一番初めに考慮しなければならないのは、社員の現状です。

例えば、全くの業界初心者であれば、ゼロから社内で育成するには時間がかかります。そのような場合は、入社前にOFF-JTなどで予備知識を持たせてから、社内教育に取り組むと良いです。

実施の順番
①OFF-JT
②OJT(知識習得)
③OJT(技術習得)

①OFF-JT(OFF the Job Training)

 社外勉強会や社外研修会とも呼ばれます。

職場を離れて専門性の高い知識の習得や、技術の習得を目的に行います。特にOJTでは行い難い内容をOFF-JTで実施します。

例えば

・新入社員向けビジネスマナー

・管理職向けのコンプライアンス研修やマネジメント研修

・業界の法改正に伴う勉強会  など

近年では、集合型の勉強会よりも、01組織クラウドでも提供しているような、e-learningとしてインターネットを活用した知識習得サイトの利用や動画で学習が増えています。

社外勉強会の役割としては、社内では教えきれない事や、最新性や専門性の高い事に関する知識習得を行う事です。産業の変化や時代のニーズに応じて学ぶものは異なるので、経営者は経済動向を意識し、自社の業務改善を行うには、社員にどのような学びをさせることは必要なのか、考える必要があります。

②OJT(知識習得)

社内勉強会と呼ばれることが多いです。主に、全社員が共通認識をすることや、同一技術を維持することを目的に実施されます。

勉強会の事例としては

・経営理念に関する勉強会

・作業手順の確認する勉強会

・新サービスを理解する勉強会

・接客スキルの統一化を図る勉強会

 などがあります。業種によって内容は異なりますが、社内勉強会の目的は「全社員の知識共有」をキーワードに考えると良いです。

では、具体的に社内で知識の習得をする勉強会を開催するにはどのように取り組むと良いのでしょうか?事例を使って紹介します。

接客スキルを統一する勉強会を作るには

このような勉強会を行う際、ベテランの方が講師になります。実は、お勧めは新人(社歴が浅い人)を講師にすることです。

理由は

・教えたことがどのように理解できているか把握が出来る
(相手の習得度がわかる)

・部下が人に教えることで、仕事の理解を深める
(知識の再認識)

という効果があるからです。

ここで指導者が留意することは、もし教えた通りの話になっていなかった場合や、間違った解釈があったり、認識の違いがあっても頭ごなしに否定をせずに、なぜそのように理解しているのか、なぜそのような行動を取っているのかという質問をしながら、認識している状況を把握します。

もし、認識に違いがあれば、違いについてしっかりとした説明をして修正します。新しい取り組みの場合でも、社歴が短い人に担当させることをお勧めします。

ベテラン社員の方よりも比較的、固定の作業が少ない分、学習する時間は確保しやすいです。

また、ベテラン社員が調べたことを聞くより、自ら調べて繰り返し学習する方が、理解が深まります。

③OJT(技術習得)

OFF-JTやOJTの知識勉強会で行ったことを実施に取り組ませます。

ただ、いきなりお客様に対応させるのが不安であったり、正式な製品や書類として提出するのが不安な場合は、疑似トレーニングを考えます。

例えば

・接客のロールプレイング
・デモ内容のWebシステムの開発
・公的書類の下書き

などです。

接客のロールプレイングもお客様や状況を設定して部分的な対応から行います。

整骨院の接客として次のような仕事があったとします。

・お客様のご用件を伺う
・ご予約の確認
・ご予約の方であれば施術のご案内
・初めての方であればサービス内容の説明と顧客情報の記入
・次回来店の予約を受け付ける
・利用状況のデータ登録
・カルテの管理

この内容を全て一気にするのではなく、ロールプレイングも段階的に行います。その段階も、事前にどのような知識習得を行わせたのかによって異なります。

例えば、事前に敬語の使い方と、お客様の応対について知識の勉強会をしたのであれば、「お客様のご用件を伺う」という部分だけ実施させます。

この時、お客様の設定をしておくと良いでしょう。

お客様設定

・70代女性
・初めて来店
・自宅のポストにチラシがあったので来店した
・腰痛がひどくて、他の整体も行ったが改善しない

という内容を決めておきます。

この内容は見た目の情報や、接客の基本として聞き出すことに該当することの共有です。これを予め決めて置かないと、お客様役のアドリブばかりになると途中で話がおかしくなります。

出来るだけ業務に該当し、普段と同じ状況で接客スキルを向上させたいのであれば、対応するお客様像を細かく設定した上で実施すると良いでしょう。

OJTの技術習得は、ビジネスマッスルを鍛えるトレーニングそのものです。接客のお客様設定が行えていれば、指導者以外の人を相手に自主トレが行いやすくなります。

部下が自分で練習しやすくするためにも、1度か2度はやり方をレクチャーし、その上で自分でトレーニングするように計画を立てさせると良いでしょう。

④自己啓発

OFF-JT、OJTの知識習得、技術習得、それぞれ個別の取り組みと思われがちですが、じつはこれらは全て繋がっています。

OFF-JTで専門的な知識を習得

OJTで全社員の知識共有となる勉強会を開催

その知識を業務で活用するためのOJTの技術習得トレーニングに実施する

このような順番で行うと、トレーニングがしやすいです。

ただ、OFF-JT、OJTの状況では、いわゆる「業務命令」で行っていることが多いため、自分で取り組むという状況ではありません。

自己啓発は業務時間外に社外に出て学ぶだけでなく、職場で業務スキルを向上するために、自ら知識と技術の習得を早めるための創意工夫でもあります。

これこそ、自主トレです。部下を自主的に活動させるには「モチベーション」が必要になります。モチベーションを待遇と関連付ける方もいますが、必ずしも待遇だけでモチベーションが上がるとは限らないのです。

社員が率先して学習、練習するようになるマネジメント方法

部下がモチベーションの上がらない(やる気が出ない)事例として次のような声があります

・説明だけして何もさせてくれない
・言われている量が多過ぎてついていけない
・一度見ただけで全て覚えろという
・上司が何でもやって手伝う事がない
・何をやるかその時にならないと教えてもらえない
・ダメ出しだけでフォローをしてくれない
・指示も何もなく放置状態

このように、待遇だけでなく仕事の取り組ませ方によってもモチベーションが下がります。

これは、アメリカの心理学者でハックマンとオルダムが提唱した「職務特性モデル」という理論に通じる話です。「職務特性モデル」とは、仕事の内容的特性が動機付けに大きな影響を与えるという理論です。

仕事の特性にある、中心的な職務次元(多様性、タスクの一貫性、重要性、自律性、フィードバック)において、中核指標の高い仕事に取り組む人は、精神(心理)状態が満たされると、個人および仕事の結果(仕事のやる気の高さ、仕事のパフォーマンス(質の高さ)、仕事の満足度、欠勤、離職率の低下)でポジティブな結果になるというものです。

出典: Hackman,J.R.& Oldham,G.R.1976. “Motivation through the design of work: Test of a theory” In Organizational behavior and human performance, 16, 250-279より 

自主トレを行うには、モチベーションが高まる5つの仕事の特性を取り入れます。

中心的な職務次元(モチベーションが高まる5つの仕事の特性)

①仕事の多様性:色々な仕事に関わっている
②タスクの一貫性:初めから終わりまで一貫した仕事に関わっている
③タスクの重要性:自分は社会にとって重要だと実感できる仕事に関わっている
④自律性:仕事の采配はある程度自分で決めて取り組める
⑤フィードバック:仕事に関する完成度や進捗について的確なフィードバックが受けられている

部下が仕事の中で、この5つの特徴を発揮できると精神状態が満たされ、モチベーションが高まります。

例えば、整骨院の接客ロープレをする際、部下に自分なりのサービス紹介チラシを作らせ、それを基に紹介するとします。

普段は接客(相手と話す)という能力だけですが、サービスの紹介を考える、チラシを作るという多様な仕事に関われます。チラシを作るところから、お客様に提案するという一貫した作業にも関われます。このチラシを作る場合、指導者の指示を受けず100%自分で考えて行えるのであれば、自律性が育めます。

最終的に指導者がお客様役になり、チラシを使ったロールプレイングを行った場合は、お客様として視点で接客の良かったところ、課題点、チラシの良かったところ、課題点をフィードバックすると、部下は更に創意工夫することになるでしょう。

このロールプレイングでOKとなり、実際にお客様へ接客し、お褒めの言葉を頂けると、タスクの重要性も感じます。

このように、小さな仕事でも取り組ませ方で「職務特性モデル」は体感でき、その後徐々に部下が自ら技術習得を行うよう行動していきます。

自己啓発は正に、部下が意欲的に取り組むことです。

その環境を整えるにも指導者が仕事を教える時に、部下の状況を考慮し、段階的に取り組む仕組みを作るということが大事です。

更に自主トレを効果的に行うには、自分の学びを自分で記録するようにさせます。仕事を覚える人が一番意欲的に取り組みます。

指導者が自分の知っていることを資料にしたり、説明するのは手間がかかりますし、多忙な業務時間を割いて準備するのは大変です。部下に教えたことを記録させ、記録内容を指導者が確認をするとういう方法が、もっとも手間が無く、成長の確認ができます。

マニュアルは指導者が作成するよりも、部下に作業の記録をさせて蓄積する仕組みにすると良いでしょう。