新しい人材活用 パラレルキャリア導入のメリットデメリット

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パラレルキャリアとは

近年、新たな働き方として注目されているのが「パラレルキャリア」です。

この言葉は、アメリカの経営学者であるP・F・ドラッカーが『明日を支配するもの』(1999年 ダイヤモンド社)で紹介した言葉です。

ドラッカーは、パラレルキャリアを「本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと」と定義しています。

戦後、日本は高度成長時代を迎え、産業構造は劇的に変わりました。

農林漁業と商業が中心だった仕事は、工業を含めさまざまな職種が増え、個人から組織(企業)で働く形態に変わってきました。

特に企業で働く人は、一定の仕事を割り当てられ、その仕事をすることで報酬(給与)を得られました。

決まった仕事と収入を得ることが「安定」だと感じ、多くの人は企業で働くようになりました。

しかし近年、この働き方が変わってきています。

特に大きな変化は、会社に行かなくても自宅で仕事できるという状況です。

通信技術の発達でインターネットを活用し、自宅にいながら仕事ができるようになりました。

実際、社員が自宅で仕事をするようになると次のようなメリットが企業に生じます。

・経費の大幅削減

社員の交通費や光熱費や備品代、場合によってはオフィスの賃料の削減になる 

・作業効率のアップ

問い合わせの電話などで仕事が中断されることなく進めることができる

社員間で仕事に関する進捗報告の時間を決めると、その時間までには仕事が終わっている

・人手不足が解消

会社で仕事をしている時より、仕事量が劇的に減少した。

それでも、全く仕事には影響は出ていない。

これまで人が足りないと言っていた仕事も、自宅でするようになると、むしろ時間に余裕が生じて、人手が余るようになった。

このように働き方の変化に仕事の仕方が変わり、仕事のボリュームに変化が出てきています。

企業にとって働き方の変化によるメリットは、社員(働く側)にもメリットが生じます。

働く側の最大のメリットは自由時間の確保です。

これまで通勤に往復2~3時間かかっていた人が、会社に行かず自宅で仕事が行えるのであれば、これまで通勤で使っていた時間を自由に使えます。

例えば、これまで育児に参加していなかった男性が育児の時間に使うとか、趣味の時間がなかった女性が自分の趣味の時間に使えます。

自由に使える時間を家事や育児に使うのではなく、新たなキャリア(経験)を蓄積することを目指して取り組むことをパラレルキャリアといいます。

パラレルキャリアと副業の違い

これまで、一度会社に雇用されば、同じ会社で働き続けることができました。

しかし働き方の変化は、自由な時間ができると同時に給与が削減されるケースも出てきました。

産業技術の進化も目覚ましく、人の代わりにAIやさまざまな機械が仕事を行い、例えばこれまで5人で行っていた仕事も2人いれば十分な状況が出てきました。

給与の削減と同時に働く場の減少を感じ、多くの人の未来への不安を生じさせます。

このような不安感もあり、自由時間を使って新たな収入を得ようと考える人が出始めました。

本来の仕事がありながら、別の仕事で収入を得ることを「副業」といいます。

副業は金銭的な報酬を得ることを目的に行動することですが、パラレルキャリアは新たな収入を得ることだけでなく、これまで行ってきた仕事では得られない知識やキャリア(経験)を得ることを目的にした活動です。

例えば、鍼灸師で仕事をしていた人が、お客様の減少を理由に月8日間自宅待機をするようにいわれました。

簡単な事務作業は自宅に持ち帰って仕事をしますが、すぐに終わる作業です。

そこで、自分の将来について色々考えることにして、空いている時間はボランティア活動をすることにしました。

複数のボランティア団体に登録して、町内清掃や、無料の学習塾で講師をするとか、子ども食堂のスタッフなどをして空いている時間を活用したそうです。

この事例のように、収入が伴わないボランティアという活動を通して、新たなキャリア(経験)を重ねることもパラレルキャリアです。

複数の仕事に関わることは副業と似ていますが、収入を得るためのみの働く副業と、収入の有無に関係なく、自分の新たなキャリア(経験)の蓄積、社会貢献活動を目的にしたパラレルキャリアとでは違いがあります。

小さな会社のパラレルキャリアの導入

これまで小さな会社で人を雇用する時は、個人の持っている能力よりも会社に合うか否かを重視してきました。

このような雇用の仕方を「メンバーシップ型雇用」と言います。

「メンバーシップ型雇用」の中心は会社(組織)です。会社(組織)は決まった時間に決まった仕事を与え、時間によって仕事を管理し給与を与えています。

小さな会社では、社員に与える仕事を獲得してくるのは、100%経営者の仕事です。

先程のように会社に行かなくても仕事ができ、社員に自由な時間ができるような状況では一定の時間で仕事を管理・評価することが難しくなります。

経営者が社員に仕事をさせ、給与を支払うために仕事を確保することにも限界が来るでしょう。

昨今では、労働時間によって給与が支払われるという雇用の仕方ではなく、割り当てた仕事の成果単位で給与が支払われるという働き方に変わってきています。

これは欧米諸国で広く普及している「ジョブ型雇用」と呼ばれるものです。

「ジョブ型雇用」は仕事の内容を明示して取り組ませるので、パラレルキャリアで活動を目指す人と「ジョブ型雇用」はマッチングがしやすいです。

 

パラレルキャリアで活動を目指す人には次のようなニーズがあります。

・新たな知識や技能のキャリア(経験)を得たい

・自分にとってやりたいことは、収入が伴わなくてもやりたい

・短期間(時間)の稼働を希望する

 

小さな会社がジョブ型雇用でパラレルキャリアの方を雇用すると次のようなメリットが生じます。

・自社にはない新たな見地やノウハウを入手できる

・必要なスキルを持った人材を、必要な時期だけ活用できる

・通常の雇用よりも人件費を含め経費軽減できる

・人手不足の解消

など

ジョブ型雇用でパラレルキャリアの方を雇用するのであれば、会社内では次のような取り組みをしておく必要があります。

・働き方の取り決め
就業規則や雇用契約書など、いつ、どのような仕事について、どのような成果でいくら支払うのかという働き方を明示します。

・成果設定
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)の設定をして、何を目指して仕事をするのかを決め、仕事の成果を分かりやすく示します。

・KPI(Key Performance Indicator:重要(主要)業績評価指標)
個人が目指すことや仕事の責任範囲はどこまでなのか明示します。

・KFS(Key Factor for Success:重要な成功要因最重要プロセス)
だれがどのように仕事を進めていくのかプロセスを決めておきます。

・情報共有やコミュニケーションの取り方をルール化する
仕事で必要な情報の共有の仕方(日報の活用や議事録の閲覧方法など)について、運用の仕方(ルール化)をしておきます。

短時間(短期間)で人材を活用して成果を上げることが可能になってきました。

パラレルキャリアという新たな働き方を求める人も増えてきました。

そのような人たちと共に仕事をする可能性があるのであれば、社内の仕事の仕方、情報の共有の仕方など、誰でも共通認識ができるように可視化しておきましょう。

パラレルキャリアのメリット

社外からパラレルキャリアとして人材を活用することもありますが、自社の社員がパラレルキャリアという働き方を希望することもあるでしょう。

自社の社員がパラレルキャリアとして活動した場合、次のようなメリットが生じます。

 ・社員のスキルアップ
自社ではできない仕事のキャリア(経験)が得られる

・人材定着
これまでの働き方の場合、女性であれば結婚・出産・育児など両立が困難になると仕事を辞める選択をする人が多かったです。

また、パートナー都合(転勤・転職)によっても仕事をやめざるを得ないこともあります。

近年、男性社員の場合、親御さんの介護やご自身の病気治療などで仕事の継続が困難になり仕事を辞める方もいました。

非常に優秀な人材なのに短時間で働くことが難しく、退職の選択肢しかなかった方もパラレルキャリアであれば、仕事を辞めずに定着させることができます。

小さな会社にとっては、この点は大きなメリットといえるでしょう。

パラレルキャリアのデメリット

自社の社員がパラレルキャリアとして活躍するのには、メリットがある一方でデメリットも生じます。

・機密情報の漏洩になる危険性がある
社外で他の仕事に就くことで自社の情報が漏洩される危険性があります。

パラレルキャリアを希望する社員には、必ず機密情報に関する誓約書を作成し情報漏洩が生じないような予防策を講じましょう。

 ・独立、転職による人材の流出
パラレルキャリアで活動を希望する人は、自分で果たしたい目的や思いがあり、それを達成することを目指して活動しています。

例えば、育児や介護ではなく、将来自分で事業を行いたいなどのビジネス的な目的を持っている方であれば、目的が達成されれば会社を辞めてしまいます。

それにより、あなたの会社のノウハウが外部に流出する恐れもあります。

人材定着と紙一重の要素ですので、この点も理解をしたうえ上で、パラレルキャリアの人材をどのように活用するのか、経営戦略を立てていくとよいでしょう。

パラレルキャリアで活動する人を外部から雇用し活用する場合と、自社の社員を活用するのでは取り組むことに違いがあります。

しかし、予め働き方のルールを決めKGI、KPI、KFSを設定し、お互いに働くことに認識合わせしておくことは共通事項です。

経営戦略としてパラレルキャリアを活用する場合は全社内の仕事の可視化をするなど社内整備から取り組んでいきましょう。

多様な働き方

パラレルキャリアは正社員として雇用されながら異なる働き方をします。

参考までにどのような働き方があるのかご紹介します。

正社員
・労働契約に期間の定めがない

・フルタイムと呼ばれ、1ヶ月20日以上の勤務で1日8時間で働く

・就業規則の作成が必要

・就業規則に記載されている範囲の仕事を行う

・有給付与や健康保険、雇用保険などの保険加入の義務が生じる

・固定給与として毎月決まった額の給与を支払い、就業規則の時間外で労働する場合は残業代を支払う

パート・アルバイト
・期間の定めがあり、労働時間、労働日数が少ない勤務形態

・就業規則の作成が必要

・就業規則に記載されている範囲の仕事を行う

・働き方によって有給付与や健康保険、雇用保険などの保険加入の義務が生じる

・時給で働くので働いた日(時間)によって給与は変動する

契約社員
・働く期間(雇用期間)がある

・契約期間だけ給与が発生し、その期間が過ぎれば無給になる。

・雇用契約の内容に沿って勤務する。

・雇用契約書の作成が必要

・雇用契約書の記載内容によって有給や社会保険の加入有無が異なる。

例えば、雇用期間が6ヶ月未満であれば有給は発生しないが、6ヶ月以上であれば有給が発生する。

社会保険の加入に関しても労働時間(期間)によっても発生する。

 派遣社員
・派遣会社から派遣され派遣先で就労する

・働く期間が決まっている(再契約で延長は可能だが、最長3年まで)

・派遣会社で雇用契約をしている

・派遣先に人件費を支払うのでパート・アルバイトに比べると時給が高い

・時給が派遣会社によって異なる

・派遣先では仕事の指導のみで、給与の支払いも含め管理責任は派遣会社が負う

このように、働く形態によって特徴があり、それぞれ個人の事情に合わせた働き方になっていました。

これまでの働き方として、正社員は所属している会社の仕事しかすることはできませんでした。就業規則にも記載されている勤務時間が9:00~18:00と1日で仕事をする内容だからです。

契約社員と派遣社員は契約内容によりますが、多くは3ヶ月単位で、1ヶ月20日以上の勤務です。

よって、この期間は他の会社の仕事をすることはできません。

パート・アルバイトは時間単位によっては掛け持ちの仕事をすることができますが、多くの仕事は短時間で軽作業の仕事であったり、1日単位で重労働の仕事です。

契約社員や派遣社員は専門的な技能を使うことが多いので、キャリアアップを目指す方が選択する働き方でした。

パート・アルバイトは即収入に繋げることを目的にすることが多く、キャリアアップにつながることは少ないです。

このように、従来の働き方は1つの仕事をしている場合、他の仕事をする余裕がありませんでした。

しかし働き方が変わり、パラレルキャリアとして正社員でありながら契約社員として働く、正社員でありながらボランティア団体のメンバーとして関わり、複数の仕事と職場に関わるなど、多様な働き方が選択できるようになるのです。

まとめ

働き方の変化から、パラレルキャリアという本業を持ちながら次のキャリア(経験)を得るために働くことが可能になりました。

副収入を目的とする副業とは異なり、自分のキャリアアップや夢の実現・社会貢献活動など、自分らしい新たな生き方を求める働き方ができるようになりました。

このような人材を他社から招き入れ、あなたの会社で活用することができます。

これは自社にはない新たな見地やノウハウを入手できるきっかけになり、経営拡大を行うにも有効な手法といえるでしょう。

またあなたの会社の社員がパラレルキャリアとして活動することもあるかもしれません。

どちらの場合でも、時間で労働の対価を決めるのではなく、仕事の成果に対して対価を支払う「ジョブ型雇用」になります。

「ジョブ型雇用」を行うには、01組織クラウドでお勧めしている、KGI、KPI、KFSの設定が欠かせません。

早めに社内の整備を整える意味でも、KGI、KPI、KFSを設定しておきましょう。