小さな会社の業務改善  事例から学ぶ取り組みのステップと取り組み方法

組織/仕組みづくり
組織/仕組みづくり

業務改善が求められている背景

近年、産業の変化に伴い、働き方は劇的な変化を求められています。

例えば…

 ・できるだけ人に会わないように

・できるだけ会社に来ないように

・働く時間はできるだけ短く

・複数の人と仕事を分け合うワークシェアリングへ

・できるだけ機械化、システム化を行い、人の稼働は減らすように

・仕事のスキルアップは会社主導から個人主導へ(セルフキャリアアップ)

・稼働の減少による収入のリカバリーは各自で考える(副業の解禁)

このような働き方を実現するのであれば、これまで仕事のやり方では対応できません。

業務改善は、社内業務を注目して仕事のし難さや、作業効率が取り組みのきっかけと考えられますが、その背景には世の中の動きや、お客様の要望があります。

この点を重視して業務改善に取り組まないと、思うような改善効果が表れません。

あなたの会社は、なぜ業務改善が必要になったのか、背景も把握した上で改善計画を考えていきましょう。

業務改善の事前準備

業務改善を行う際には、自社の仕事の全体を把握することから始めます。

例えば、エステで化粧品の販売をしていたお店が、「できるだけ人に会わないように」という世の中の動きを受け、お客様の来店が激減したとします。

今後も、お客様の来店が難しいと考え、オンラインで商品を販売することにしました。

このような場合、業務改善を考える際は「化粧品の売り方」だけに注目します。

しかし、これまで化粧品を販売するには次のような業務も付随していたはずです。

【化粧品販売のプロセス】

①お客様の状況をヒアリングする
②必要によってお手入れの方法をアドバイスする
③必要な商品をご提案する
④購入手続きをする
⑤お品物(化粧品)のお渡し
⑥次回来店の予約

このプロセスの④「購入手続き」だけをオンラインに変えても、売上減少の状況は変わりません。

このお店が化粧品を販売することは「お客様の状況を聞き出し、お手入れ方法のアドバイス」の結果として生じたことなので、①②③のオペレーションも変える必要があります。

 

このことに気がつかないで「購入手続き」のみ変えると、クレームが増加したり、顧客離れの要因を生むことになります。

業務改善を行う前には、全社の部分的な業務に着目するのではなく、あなたの会社のすべての仕事の流れを把握しておきます。

業務改善を考えるサイン

業務改善は闇雲に行っても業務効率は高まりません。

業務改善が必要な時、次の3つのサインが表れます。

稼働人数に対して収益が低い

本来稼働人数が多ければ、比例して収益も上がるはずです。

例えば、2人で稼働して100万円の売上げがある仕事が、3人で稼働することにより150万円の売上に変わった場合、増員と収益は比例しています。

しかし、3人の稼働になったにも関わらず売上げが110万円にしかならないのであれば、これは仕事の仕方を見直す必要があります。

作業時間の増加

稼働人数に対して収益の低さを感じるのと同じタイミングで表れるサインです。

例えば、2人で5時間稼働して100万円の売上げがある仕事が、2人で7時間稼働して100万円の売上にしかならないのであれば、仕事の仕方を見直す必要があります。

クレームが多い

仕事をしていて、クレームが多いということは商品の品質やサービス提供の状況がお客様の期待値を満たしていないということです。

自社で行っている仕事のオペレーションのどのような部分が、お客様の期待値を満たしていないのか、業務の分析・改善を行います。

このようなサインは、仕事の仕方が世の中の求めや、お客様のニーズに合っていない時に生じます。

仕事のどの部分がニーズに合っていないのかオペレーションを把握し、分析を行って改善を考えるサインを見逃さないようにしましょう。

業務改善の仕方

先程のような業務を行っている中で先ほどの3つのサインが出てきたら、業務改善に取り組みましょう。 

業務改善を行う手順

①全社の業務全体を書き出し可視化する

②3つのサインはどの業務の、どのタイミングで発生しているのか分析する

③KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)、KPI(Key Performance Indicator:重要(主要)業績評価指標)、KFS(Key Factor for Success:重要な成功要因最重要プロセス)を基に、業務分析を行い、経営戦略的な視点で業務の断捨離を行う

④今後取り組んでいく業務が整理できたことで、よりよくするための改善内容を考える

⑤業務改善の内容を記録(可視化)する

 このような手順で進めていくとスムーズに業務改善が行えます。

業務を改善する3つの方法

④の今後取り組んでいく業務が決まりましたら、次の方法で、よりよくするための改善内容を考えます。

 仕事の置き換え(切り替え)

あなたの会社で行っている仕事のコアな流れは基本的に変わりません。

例えば先ほどの化粧品の販売をオンライン販売に変更する事例の場合、店頭で販売していた時のプロセスは次の通りです。

①お客様の状況をヒアリングする

②必要によってお手入れの方法をアドバイスする

③必要な商品をご提案する

④購入手続きをする

⑤お品物(化粧品)のお渡し

⑥次回来店の予約

 

このプロセスをオンライン販売に切り替えた場合、

 

①お客様の状況をヒアリングする ⇒オンラインアンケート

②必要によってお手入れの方法をアドバイスする ⇒オンラインカウンセリング(Zoomなど)

③必要な商品をご提案する ⇒オンラインカウンセリング(Zoomなど)

④購入手続きをする ⇒ オンライン決済

⑤お品物(化粧品)のお渡し ⇒ 郵送でのお届け

⑥次回来店の予約 ⇒ オンライン予約

 

と、仕事の流れは変化せず他の作業に置き換わる(切り替わる)だけです。

 

この点を確認せず「オンラインだから不要だね」と仕事を削除してしまうと、サービス提供の品質が変わってしまう場合があります。

これまで行ってきた仕事の流れの基本は変わりません。

ただ、他の作業に置き換わったり、2つの作業が1つに集約された結果、これまで行っていた仕事の工数が1つ減ることはあっても、行っていた仕事そのものがなくなる(廃止される)ことはありません。

仕事は何かに置き換わるか、切り替わるか、集約されるかで改善されます。

 仕事の自動化(システム化)

仕事の置き換えや(切り替え)になるのが手作業からの自動化です。

機械を使って一連の流れを自動で行えるようにします。

先程の化粧品販売のオンライン化もインターネットのシステムを使うと自動化できます。

例えば、

①お客様の状況をオンラインアンケートでヒアリングする

入力後アンケートデータが表示される

②スタッフとオンラインで接続

カウンセリングや③必要な商品をご提案する

カウンセリング終了後

④購入手続きをするオンライン画面が表示され、商品購入

⑤お品物(化粧品)は郵送の手続きが行われる

⑥次回の予約画面が表示されオンライン予約


という、自動化が行えます。

仕事の自動化を行うのも、既存の仕事の流れから考えないとオペレーションミスを生み、クレームの増加に繋がります。

新しい仕事の割り振り(役割分担)

業務改善を行うと、従来の仕事は何かに置き換わるか、切り替わるか、集約されます。

それに伴い、新たな業務が生まれます。

例えば、化粧品販売をオンライン化した仕事の場合、化粧品はこれまで店頭販売でお客様にその場で化粧品をお渡しすればよかった作業から「郵送」という新たな仕事が生まれました。

郵送する際には、さらに次の仕事が付随して生まれます。

①発送先のお客様・商品の納品書の印刷

②納品書に沿って、商品のピッキング

③商品の箱詰め

④発送伝票の印刷

⑤商品の発送

 

これは、店頭で化粧品を販売していた時にはなかった仕事です。

この仕事を、誰が、どのタイミングで、どのように行うのか役割分担や仕事の流れを明確に決めます。

新しい仕事が生まれた時は、オペレーションミスが生じ、クレームが増加しがちです。

このようなことを予防するためにも、マニュアルなどの作成に着手し、情報共有を行っていきましょう。 

業務廃止の留意事項

業務改善の方法の一つとして廃止という手法が取られることがあります。

例えば、化粧品販売をオンラインで行うとした場合、次のように業務改善が行われました。

 

①お客様の状況をヒアリングする ⇒オンラインアンケート

②必要によってお手当の方法をアドバイスする ⇒オンラインカウンセリング(Zoomなど)

③必要な商品をご提案する ⇒オンラインカウンセリング(Zoomなど)

④購入手続きをする ⇒ オンライン決済

⑤お品物(化粧品)のお渡し ⇒ 郵送でのお届け

    a)発送先のお客様・商品の納品書の印刷

    b)納品書に沿って、商品のピッキング

    c)商品の箱詰め

    d)発送伝票の印刷

    e)商品の発送

⑥次回来店の予約 ⇒ オンライン予約

 

この中の⑤は作業工数が多く、自社では対応できないので、⑤だけ廃止にしてしまうと業務矛盾が生じますね。

もし、自社でできないのであれば、⑤だけ外注に出す(置き換え)になるはずです。

繰り返しになりますが、業務改善は次の3つの方法で行われます。

 

1.仕事の置き換え(切り替え)

2.仕事の自動化(システム化)

3.新しい仕事の割り振り(役割分担)

 

もし、業務廃止を考えるのであれば、⑤の商品発送だけでなく、化粧品販売そのものの廃止を検討します。

例えば、化粧品の価格を現状より高額に設定し、富裕層向けにお客様を絞り、一般顧客向けの販売を辞めるとします。

この場合は、一般顧客への化粧品販売(①~⑥の全て)が廃止になっていますね。

これは業務改善という視点ではなく、経営戦略の視点になります。

業務改善で用いられる廃止とは、オペレーション上の一作業の廃止ではなく、経営戦略的な視点から業務を分析して検討することです。

この点を読み誤ると、経営危機を引き起こしかねません。

廃止を検討する場合は、KGI・KPI・KFSを基に経営戦略的な視点も含めて熟考します。

先ほどの事例のように、おつき合いしたいお客様そのものが変わることもあります。

この場合は、これまでのお客様に行っていた業務そのものが廃止になります。

業務廃止は経営戦略の要素です。

安易に考えず熟考・分析の上で行うことをお勧めします。

業務改善の仕上げは可視化

これまでの業務を見直し、よりよい方法に改善したのであれば、これを一部の社員だけで利用するのではなく、全社員で活用できるようにします。

業務改善した内容を社内で標準化するには、KGI・KPI・KFSに沿って業務を可視化しておくことが欠かせません。

改善した業務が効果的か否かを比較するにも、何を目指して、どれくらいの仕事を、どのように取り組むかが決まらなければ測ることができません。

業務改善は、これまでの業務を洗い出す仕事から始まります。

このことを経営者が一人で行うより社員の協力を得ながら、記録していけば結果的に業務の可視化に繋がりますね。

一度可視化できれば、その後再び業務改善を行う場合には作業がスムーズに行えます。

可視化する情報には次の3つがあります。

①全社業務の一連の流れ

②その個々の業務で生じるオペレーション

③オペレーションで生じる留意事項や特記

これらはマニュアルやワークフローとして記録しておくと、社員を育成する時のツールとしても使えます。

更に今後、業務の見直しが必要になった場合も、簡単に分析をすることができます。

日本企業の中で事業承継が行えず消える会社がある一方で、何百年も続いている会社もあります。

その差は、先代が行ってきた仕事のノウハウが人伝いだけでなく、後で読み返しできる資料として残っているかどうかです。

それだけ、ビジネスのノウハウを記録として残していくことは、企業の存続を左右するほど重要なことです。

01組織クラウドであれば、マニュアルやワークフローを作成する機能があります。

これらの機能を使って、社員の方に業務改善を行ったことを入力してもらえれば、経営者が作業を行わなくてもノウハウを蓄積することができます。

業務を見直し改善する時こそ、仕事の可視化に取り組むチャンスです。

社員に役割を分担させ、仕事を記録しデータ化に取り組み、誰でも仕事の流れや取り組み方が見えるようにしていきましょう。

まとめ

社会情勢や産業の変化などで、働き方の変化が求められてきています。

その変化に対応するには、従来の仕事のやり方を変える業務改善が必要になります。

ただ、業務改善は一部の仕事だけにフォーカスして考えるのではなく、経営戦略的な視点から捉えて考える必要があります。

特に業務の廃止を考える場合は、業務の中にある1つのオペレーションを廃止するということではなく、経営戦略の視点から熟考して断捨離を考えます。

業務改善を行う時は、業務の可視化を行うチャンスの時でもあります。

自社の業務を誰でも閲覧ができるような資料作り、仕組み作りにも取り組んで行きましょう。

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