小さな会社が倍成長する業務の「見える化」

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「可視化」と「見える化」の違い

小さな会社が倍成長する取り組みの一つとして、仕事の可視化があります。

仕事の可視化は、仕事の内容を個人の頭の中だけに収めるのではなく、他の人にもわかるように文字や写真、データなどの情報に変え、視覚的にわかりやすい状態にすることです。

可視化をすることで、一部の社員だけでなく、全社員が見たい時に必要な情報を見られるようになります。

これにより、1人しかできなかった仕事が、社員の誰でも行うことができ、仕事の統一性や生産性の向上などのメリットがあります。

今回お伝えする「見える化」は、この可視化とは意味合いが異なります。

「見える化」という表現がビジネス界で用いられたのは、トヨタ自動車の業務改善活動からです。

1988年 岡本 渉氏が『プラントエンジニア』第30巻2号で「生産保全活動の実態の見える化」という論文を発表しました。

この論文には

『総括すれば、活動の中心である「人」、「モノ(設備)」、「費用(工数)」の不備の是正・適正化や、これを支える「情報」「理念」の充実に期待がある。現場の第一線から当部署へ期待する役割が「見える化」で明確になり、課題を共有できた』

と書かれていました。

この論文を基に業務改善されたのが「あんどん」と呼ばれる異常通知ランプです。

トヨタの生産ラインに設置され、異常が発生すると、このランプが点灯し、さらに異常の種類を色分けすることで、作業員全員がすぐに異常の発生と種類を感知できる仕組みにしました。

「可視化」は、全社員が見たい時に必要な情報を見られるようにすることですが、反面必要だと思わない人は、その情報を見ようとしません。

つまり、大事な情報を「可視化」しても、見るか見ないかは社員に委ねている状況で、確実に全員に情報が届いているとは言い難いのです。

「見える化」は、見えない情報を常に見える状態にし、「問題・課題」が生じてもすぐに解決できる状況を作り、全社員の必要か否かという思いには関係なく、情報が必ず届くように仕組み化し、その上で社員から意見や改善に向けたアクションを促すようにすることです。

「可視化」と「見える化」は、取り組んだ後の状況や意図に違いがありますが、「見える化」に取り組むのであれば、事前に仕事の「可視化」をしておきます。

会社全体の仕事の流れやタスクの全体が「可視化」されていると、「見える化」がスムーズに行えます。

「見える化」に取り組む 3つのメリット

リスクマネジメントがしやすい

仕事で生じていた作業上のリスクやミスを「見える化」することで発見しやすくなります。

「見える化」することで、仕事のどの部分で、ミスが引き起こされやすいのか、どのようなオペレーションに変えることで予防できるかなど、発見された課題に対して全社員で要因の分析や改善行動を考えやすくなります。

特に、経営戦略として設定するKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)やKPI(Key Performance Indicator:重要(主要)業績評価指標)を考える際に、「見える化」することで、目標達成に向けた具体的な行動が考えられ、それに伴う仕事の障害(リスク)を予測し対策を考えることもできます。

育成・評価が連動した仕組みが作れる

小さな会社では、仕事は属人的に行われ、仕事の仕方や品質が統一されていることは少ないです。

それゆえ仕事を教える際、三者三様の教え方が発生します。

この状況が教わる側を混乱させ、仕事を覚えるにも必要以上の時間を要してしまいます。

社員それぞれ、属人的な方法で行われている仕事を「見える化」で統一し、全社員が同一の方法で仕事をするように整えます。

更に、仕事で必要な能力も「見える化」しておくと、その能力に満たない人に仕事を割り当てることが防げます。

オペレーションのミスだけでなく、能力不足によっても仕事のミスは生じます。

仕事に必要な能力を明らかにしておくことでミスを防ぐだけでなく、その能力を身につけさせるために、どの仕事を最優先で取り組ませるかという育成のステップが作れます。

育成した結果として、社員名と習得した能力名が一目でわかる一覧表にすると社員評価にもなります。

仕事で使う能力を明らかにすることは、社員評価を行う上で共通のものさしになります。

習得度を数値化で表したり、◯か×などの記号での能力リストがあれば、社員評価や計画的な人材育成、仕事の配置転換などさまざまな人の活用を考える時の参考資料になります。

このような資料が作れるのも「見える化」に取り組んだメリットと言えるでしょう。

コストの削減

「見える化」によって仕事の統一化が図れます。

誰でも同じ仕事を同じ工数で行うことができれば、作業時間や人員などの管理が行いやすく、業務全体で無駄をなくすことができます。

これまで、残業や休日出勤など社員の申請により応じてきたことも、「見える化」で稼働時間や稼働人数のアラート設定をすることができます。

このような管理が行えるようになると、付属する光熱費・交通費・残業代などのさまざまなコストの削減につなげることが可能になります。

「見える化」の取り組み方

 「見える化」に取り組むには3つのステップがあります。

「問題・課題」を把握改善するPDCAの作成

「見える化」を行う前には、仕事を誰でも理解できるように、文字やデータ、図などに表して「可視化」しておきます。

可視化することで、会社全体で生じている「問題・課題」を発見します。

「問題・課題」を発見するには、2つの視点が必要です。

①求める姿・成し得たい姿

自社の短期、中期がどのような状況になっているのか、未来の姿を明らかにします。

②現状把握

その未来の姿に近づけるために、会社の現状はどうなっているのか。

何が障害になっているのか、何が仕事の進捗を遅らせているのか原因を分析し、解決策を考え、改善計画を立てます。

求める姿と現状把握によって、ギャップが明らかになります。

このギャップの中に、あなたの会社の「問題・課題」が隠れています。

あなたの会社は、取り巻く社会環境や経済動向、お客様のニーズや、産業に関連する技術変化など、さまざまな影響を受けます。

お客様の変化や、競合他社の変化、それに関わる自社の資金状況、社員の仕事ぶりなど、現状が把握できれば、求める姿とのギャップから「問題・課題」の分析が行えます。

限られた範囲だけに注目するだけでは、会社全体の「問題・課題」は把握できません。

「問題・課題」が把握できましたら、改善に向けてのPDCAを作成します。

「見える化」のPDCAは、Checkの評価が最も重要です。

「見える化」することで、どのような効果が生じるのかを想定し、Plan・Doを考えます。

ワークフローを作成し、マニュアルで全体把握をする

仕事を「見える化」する最大の目的は、見えない情報を常に見える状態にし、「問題・課題」が生じてもすぐに解決できる状況を作ることです。

そこで仕事の開始から終了まで一連の流れをスッテプ化したワークフローを作成します。

ワークフローは仕事の一つひとつの流れをステップ化したものです。

このワークフローは単独で存在するのではなく、他の仕事との関わりがあります。

例えば、社労士の仕事でお客様の労務問題を改善するため、就業規則の修正をする仕事があったとします。

この「就業規則の修正」という仕事には次の仕事が付属します。

①お客様から状況を聞き出す(ヒアリング)

②課題の分析と提案書類の作成

③課題改善の提案プレゼンテーション

④課題解決に関する就業規則の修正

⑤就業規則修正後のお客様との最終確認

⑥変更届に添付する意見書の作成

⑦労働基準監督署への届出

⑧お客様への変更届完了報告

この①~⑧それぞれにワークフローのステップがあります。

①~⑧のワークフローを取りまとめ、各番号と番号の間で生じる留意事項や作業ミスを引き起こしそうな箇所について特記を記入しておくのがマニュアルです。

ワークフローだけでなく仕事全体の流れ・関係がわかるようにマニュアルを作成します。

このような整理を行うことで、仕事のどの部分でミスが生じやすいのか、どのようなcheck作業を設けることで予防できるかまで「見える化」することができます。

仕事の手順や留意事項だけでなく、作業時間、かかるコスト、作業に必要な人数や、仕事に必要な能力なども情報として記入しておきます。

このような「見える化」をすることで、全社員で同じ仕事が行え、作業効率の維持や商品・サービスの品質を保つことができます。

仕事で必要な能力を明確にする

ワークフローやマニュアルを作成しても、仕事をする社員の能力がその仕事に達する状況でなければ、「問題」を引き起こす可能性が生じます。

そこで、仕事をするにはどのような能力が必要なのかも、ワークフローに書いておきます。

例えば「就業規則の修正」をする仕事の場合

 

①お客様から状況を聞き出す(ヒアリング) ⇒ 実務経験2年目以上が必要

②課題の分析               ⇒ 実務経験2年目以上が必要

③提案書類の作成             ⇒ WordかPowerPointが使える人

④課題改善の提案プレゼンテーション    ⇒ 実務経験2年目以上が必要

⑤課題解決に関する就業規則の修正     ⇒ WordかPowerPointが使える人

⑥就業規則修正後のお客様との最終確認   ⇒ 実務経験2年目以上が必要

⑦変更届に添付する意見書の作成      ⇒ WordかPowerPointが使える人

⑧労働基準監督署へ届出          ⇒ 社員であれば誰でも可

⑨お客様への変更届完了報告        ⇒ 実務経験2年目以上が必要

 

このように、同じ仕事の中でも活用する能力の違いも一目で分かります。

「見える化」の目的は、見えない情報を常に見える状態にし、「問題・課題」が生じてもすぐに解決できる状況を作ることです。

しかし、ここで留めても仕事で必要な能力と社員の能力にギャップが生じているのであれば、同じような問題が何度となく繰り返される可能性が生じます。

小さな会社が、仕事の「見える化」に取り組むのであれば、ワークフローやマニュアルの作成で終えるのではなく、「問題・課題」の要因になり得る、仕事で必要な能力を整理するところまで行うと、より取り組みのメリットが得やすくなります。

「見える化」に取り組む上での留意事項

小さな会社が「見える化」に取り組むことは、経営戦略的に多くのメリットがあります。

反面、取り組むことも膨大になる可能性があります。

また、経営者が一人で内容を決め作業を進めていくと社員から反発が生じる可能性もあります。

特に、仕事で必要な能力を経営者が一人で「見える化」してしまうと、社員の反発が強まり、「見える化」が進まなくなります。

「見える化」に取り組む時は、必ず全社員を巻き込み、全社としての取り組みにしましょう。

PDCAを作成する時に社員にも役割を分担させ、定期的なミーティングを取り入れ進めていきましょう。

まとめ

小さな会社で仕事の「見える化」に取り組むには、「問題・課題」の把握改善を行うPDCAの作成から始まります。

このPDCAを行うことで、仕事の整理や細分化が行いやすくなります。

細分化した仕事はワークフローやマニュアルに記載し「見える化」していきます。

ワークフローでは仕事の手順をステップ化し、オペレーション上で留意しなければならないことを詳しくステップ化して書いていきます。

この時、仕事で必要な能力も記入することで、社員評価に活用することも可能になり、取り組みのメリットが増します。

ワークフローは、1オペレーションごとの仕事のステップですので、ワークフローとワークフローの関連性や移行の際の留意事項など、仕事全体の流れになることは、マニュアルに記載します。

これにより、仕事の統一性やオペレーションミスや能力不足によるミスを予防し、会社全体の品質維持や作業効率の向上に繋がります。

このように「見える化」に取り組むと、多くの活動が生じます。

経営者が1人で行うのではなく、全社員を巻き込み役割を分担させながら取り組んでいきましょう。

「見える化」は属人的に行なっている仕事を誰にでも見えるようにする「可視化」とは違います。

小さな会社でも「トヨタ」のエッセンスを用いた、リスクマネジメントや社員育成の取り組みが行えます。

01組織クラウドでは、「見える化」を支援するワークフローやマニュアル作成のツールや、KGI・KPI・タスクの関連性を図式化する機能があります。

01組織クラウドのような仕組みを活用し、経営戦略として「見える化」に取り組んでみてはいかがでしょうか。