自社のノウハウをナレッジ化するのに必要な作業工程の考え方と工程管理

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作業工程とは

作業工程という言葉は製造業や建設業でよく用いられている言葉です。

作業工程は「作業」と「工程」と2つの意味があります。

それぞれ、広辞苑で意味を確認すると次のような説明がありました。

・作業:体や頭を働かせて一定の手順で仕事をすること。

・工程:仕事や作業を進めていく順序・段階。また、その進みぐあい。

出展:広辞苑

 「作業工程」とは、「体や頭を働かせて一定の手順で仕事を進めていく順序・段階」のことです。

一度に大量の製品を作る製造業や、安全基準を順守する建設業では、誰が担当しても同一基準・同一品質の製品を作ることが求められます。

そこで、同じ手順、同じ作業時間を定め、同一品質の製品が作られるように作業工程が必要になります。

近年、どの業種でも同じ会社で商品・サービスの提供をするのであれば、「同一品質」を重視されています。

例えば、ある鍼灸院で次のような出来事がありました。

開業時は順調にお客様数が増えてきましたが、半年くらいしてから、お客様数が半減しました。

そこで、来院のお客様に「当院利用についてのアンケート」を実施し、アンケートにフリーコメント欄を設け、お客様の率直な意見も記入できるようにしました。

フリーコメント欄には、スタッフのAさんとBさんのスキル差について多数記載がありました。

中には「Aさんは上手で接客の感じもよいけど、Bさんはあまり上手じゃないし、接客もあまり感じがよくない。
できるだけAさんに担当して欲しいけど、Aさんを予約するのに時間がかかるようになったので、来る回数が減った。」というコメントがありました。

これは事例の1つですが、このように同じ会社なのに、社員のスキル差によって顧客離れが生じるケースは意外と多いのです。

このような視点からも、どのような業種であっても商品・サービスの同一品質を維持する作業工程の作成が重要視されています。 

「工程」と「行程」の違い

仕事や作業を進めていく順序・段階を「工程」と言いますが、同じ読みで「行程」という字があります。

広辞苑では「行程」を次のように説明しています。

・行程:目的地までの道のり。旅行などの日程。

目的地に着くまで道筋や、距離・移動スケジュールを指します。

ビジネスシーンでも「工程」と「行程」は使い分けられています。

仕事の具体的な内容や手順などは「工程」を使います。

仕事と仕事の繋がりや、段階をステップやチャートなどの図を使って表します。

ワークフローやマニュアルは「工程」をまとめた資料です。

「行程」は移動する距離や日数を表しますので、仕事の手順やステップを示す言葉としては用いません。

「行程」が用いられるのは、経営計画などの大まかで長期的な計画など、時系列で表す場合に用います。

商品・サービスの同一品質を維持するには、どのような手順で、どれくらいの時間や人数が必要になるかという「工程」が必要です。

しかし「工程」はあくまでも、「一定の手順で仕事を進めていく順序・段階」を示すことです。

同一品質を目指すための、時系列要素である「行程」の視点も含めることが大切です。

作業工程の作り方

作業工程を作成するには、目指す姿を示す目標設定と、どのような手順でどれだけの時間をかけて達成するのか、仕事の詳細を洗い出します。 

事例

ある鍼灸院の場合

・目標:お客様のリピート率 100%

・施術の工程

受付 

来院時の症状や気になることを確認し、カルテの準備をする

初診のお客様には初診表を記入していただく。

問診

問診をします。

ゆっくりとした口調で、丁寧に話を聞きます。

身体の症状をできるだけ詳しく把握するように、症状を想定した質問をします。

基本的な問診質問事項

・体のどの部分が痛いですか?

・いつ頃から痛いですか?

・この痛み以外に体の不調はありますか?

・この痛みについて、薬を飲んだり他の病院へは行きましたか?

など、回答されたことは、電子カルテに入力します。 

測定・検査

問診内容を客観的に判断するため、各種症状テスト・測定・触診等を丁寧に行ないます。

この時の症状や結果も、電子カルテに入力します。

施術の選択

症状テスト・測定・触診等の結果を踏まえ、施術の内容を提案します。

お客様の状況やご要望を踏まえ、どのような施術を行うか選択して頂きます。

施術

施術をします。

お客様に刺激量等を確認させて頂きながら行います。

「工程」は、これまで取り組まれている仕事の「可視化」と同じように感じられるかもしれません。

「工程」と「可視化」の大きく異なる点は作業時間の把握です。

必要な仕事をすべて洗い出し、それぞれの仕事を細分化した「工程」を順番に並べます。

各「工程」に必要な時間を割り出します。

仕事に応じた時間単位で、それぞれの「工程」の開始と完了を記入します。

これを見やすい一覧表にして作成し、仕事ごとに色分けすると不要な空き時間や、重複する時間の存在を把握することができます。

もし不要な空き時間や、重複する時間があったのであれば、それは改善内容として仕事の見直しが必要になります。

また、不要な時間を発生させないためにも取り組む行動は詳しく明記します。

例えば問診が不十分だと、その後の施術でお客様から要望とは違うと言われるかもしれません。

このようなことが生じると本来想定していた業務が行えず、「クレーム対応」という利益に繋がらないことに時間を使ってしまいます。

問診項目を詳しく記入し、クレームが生じないように工夫します。

もし、問題が生じたとしても工程があれば、どの工程のどの部分にミスが生じたのかを、すばやく把握して短期間で対処することができます。

このような視点からも工程には、それぞれの作用時間や、対応する人数などを記入しておきましょう。

「工程」は作成したら終わりではなく、実施する際に「手順通り仕事が進んでいるのか?」、「全社員この作業工程を守っているのか?」など、同一品質を保つための管理が必要です。

工程を作成するのであれば、工程を管理する方法も併せて考える必要があります。

「工程管理」の取り組み方

同一品質や作業効率を維持するには、工程を効率的な方法で計画し運営していきます。

作業時間などの時間軸が含まれたスケジュールも含めた工程を作成し、予定通り商品・サービスの提供が行われるかを管理していきます。

工程管理は、次の3つのステップで取り組んでいきます。

職場環境の整備

工程を用いても職場の環境が整っていなければ、同一品質の再現や作業効率の効果は表れません。

工程を活用した仕事を行うのであれば、職場の環境も同じ状況にします。

例えば、鍼灸院で施術を行う機器が常に同じ場所においてあり、誰でもすぐ使える環境にあるのと、個人個人で管理し、機器を使うまでにタイムラグが生じる場合とでは、工程の効果は測れません。

まずは、どのような職場環境であれば、同一品質の再現や作業効率の維持が行えるのか検証し、その職場環境を維持する内容を管理項目に含めておきます。

工程の検証と管理項目の作成

工程を作成したのであれば、その手順に沿って仕事を行います。

全社員で実施し、誰が行っても同一品質の再現や作業効率の維持ができるかを検証します。

検証の結果、全社員で同一作業による同一品質・作業効率の維持が確認できたら、作業工程として採用します。

採用された作業工程に、職場環境、作業にかかる所要時間、必要な人数などを追記し、管理項目として活用します。

工程の可視化

作成した工程は、いつでも誰でもすぐに見ることができるよう可視化します。

手書きで作成したものは、共有エリアにファイリングしたり、パソコンのWordやExcel、PowerPointなどで作成した場合は、保存場所やファイル名を共有しておきます。

01組織クラウドのワークフローやマニュアル機能を活用すると、更に情報の共有化が行いやすいです。

あなたの会社で、最も活用しやすい方法で、工程の可視化をしていきましょう。

工程管理で最も重視することは、全体の工程や進行状況が、誰でも一目で確認(可視化)できるような仕組みにすることです。

工程を可視化することで、何かイレギュラーな出来事が起きたり、作業ミスが生じた時に、どのように作業を進めるとリカバーが行えるのか、問題は何かを簡単に把握することができます。

このような問題が生じた場合、それを基に改善することも簡単に行えます。

工程の効果性が十分に発揮できるには、工程管理が欠かせません。

何をどのように管理しているのか、全社員で共通の認識を持つためにも工程の可視化は非常に重要なポイントになります。

「工程管理」のメリット

工程を管理することで、4つのメリットがあります。

顧客満足度の向上

工程管理を行うことで、全社員の誰が行っても同一の品質で商品・サービスを提供が行えれば、お客様からの信用度が高まります。

あなたの会社を使って頂く機会が増えることで、これまで以上にお客様からさまざまな情報を入手する機会が生じます。

このような機会を活用し、お客様の更なるニーズを取り入れることで、結果的に顧客満足度を向上させることができます。

お客様は、信用できない相手に本音を話すことはありません。

企業に対する不満があったとしたら、それは直接企業には言わず、SNSやお客様の親しい方々にマイナスの評価として伝えます。

このような状況になってから業務改善を行っても手遅れです。

お客様の更なるニーズを聞き逃さないようにするためにも、工程を作成し同一品質の商品・サービスの提供に取り組んでいきましょう。

社員のモチベーションの向上

工程管理を行うことで、社員は仕事に対する不安や迷いが軽減されます。

特に入社間もない人にとって、仕事で不明点があっても忙しく仕事をしている経営者や管理職には聞きにくいと感じ、不明点を後回しにすることがあります。

それが、結果的に作業ミスやクレームに繋がってしまい、更に自己嫌悪感を募らせます。

しかし、工程が作られ、管理Pointがどこかが明確になれば、自分で考え行動することができます。

これまでなら、聞かないとできない仕事にも自主的に取り組むことができ、結果的に社員のやる気を高めます。

自分で考え、行動したことがお客様や会社の為に役に立つことが体感できると、仕事に対するモチベーションの向上に繋がります。

経営戦略が立てやすい

工程管理をすることで、会社全体のヒト・モノ・カネの流れを把握しやすくなります。

例えばコストを削減するのであれば、仕事のどの工程を工夫すればよいか?

作業効率が低下している要因として作業時間と稼働人数のバランスがよくないのではないか?

現状の人員から作業効率を高めるために、作業工程のどの部分を工夫すればよいか?

など、経営全体の視点から、さまざまな課題に対して戦略的な解決策を考えることができます。

自社のナレッジの構築

工程管理は、自社の業務全体を洗い出し、それぞれの仕事を細分化した「工程」を作り、その「工程」が守られて同一品質として商品・サービスが提供されているかを管理します。

この工程管理にこそ、あなたの会社のナレッジ(知識・知見)が凝縮されています。

これまで、このナレッジは経営者の頭の中や、管理者や担当者の頭の中にしかなかったことですが「工程管理」として、誰にでも見えるようにすることで、資料化・デジタル化へ移行できます。

ナレッジは、時代や人と共に変わっていきます。

属人的な情報としてストックするのではなく、会社の資産として蓄積できることも大きなメリットになります。 

まとめ

作業工程という言葉は、製造業や建設業だけに当てはまる言葉ではなく、どのような業界でも当てはまる言葉です。

作業工程表を作成し、工程管理を行うことで、小さな会社でも顧客満足の向上や社員のモチベーション向上などさまざまなメリットが生まれます。

特に大きなメリットは自社の資産として仕事のノウハウを蓄積できることです。

手書きなどの資料として蓄積することもできますが、パソコンを使ってデータとして蓄積することもできます。

01組織クラウドでも、KGI・KPI・KFSの設定やワークフロー・マニュアル作成の機能を活用することで工程管理と同様のことが行えます。

クラウドのように、誰でも簡単に閲覧できる仕組みにすると、社員が工程の変更や留意点の修正が行いやすくなります。

あなたの会社の商品・サービスの品質維持に工程管理を行ってみてはいかがでしょうか?