10年ほど前から、若手社員を中心とした早期離職率が増加傾向にあります。
これは「七五三」現象として有名で、早期離職率は中学卒が70%、高校卒が50%、大学卒が30%と言われています。(平成19年度版 青少年白書)
労働者人口が減少している中、コストをかけて採用した社員が早期退職することは、会社にとってなかなかの痛手です。
今回は、早期退職の原因と、その改善についてお話しします。
早期退職の現状
早期離職率とは、毎年の入社総数に対して、3年以内に退職した人の割合をいいます。
厚生労働省が令和2年10月に発表した、新規大卒就職者の事業所規模別就職後3年以内の離職率の推移によると、規模の小さい事業所ほど、離職率が高くなっているのがわかります。
事業所規模 | 平成28年 | 平成29年 |
5人未満 | 57.7% | 56.1% |
5~29人 | 49.7% | 51.1% |
30~99人 | 39.3% | 40.1% |
100~499人 | 32.2% | 33.0% |
500~999人 | 28.6% | 29.9% |
1000人以上 | 25.0% | 26.5% |
早期退職の原因
まずはなぜ早期退職が起きてしまうのか、原因を知りましょう。
本来であれば、退職した本人に対し直接理由を聞くのが一番です。
しかし、本当の退職理由を教えてくれる人は少ないですし、すでに退職してしまった人に退職理由を聞くことも困難です。
アデコによる、日本全国の20代の男性131人と女性199人の合計330人を対象に、2018年1月26日〜28日の間に行った「新卒入社3年以内離職に関する調査」によると、
退職理由のトップ5は
1位 自身の希望と業務内容のミスマッチ(37.9%)
2位 待遇や福利厚生に対する不満(33.0%)
3位 キャリア形成が望めないため(31.5%)
4位 長時間労働のため(31.2%)
5位 上司や同僚との人間関係に関するストレス(25.8%)
また、株式会社ビズヒッツが新卒1年未満で転職した経験がある381人を対象に行なった「転職理由に関する意識調査」によると、
1位 人間関係が悪い(31.2%)
2位 長時間労働・休日への不満(22.5%)
3位 仕事内容が合わない(17.3%)
4位 求人内容と現実が違う(8.1%)
5位 給与が低い(6.8%)
となりました。
他方、早期離職は新卒入社に限らないので、転職理由のランキングも見ていきましょう。
dodaが2020年度の1年間に転職活動を行った約10万人を対象に行った調査によると、
ランキングは下記のようになりました。
1位 ほかにやりたい仕事がある(11.2%)
2位 会社の将来性が不安(10.2%)
3位 業界の先行きが不安(10.1%)
4位 給与に不満がある(8.6%)
5位 残業が多い/休日が少ない(5.5%)
以上をまとめると、早期離職の主な原因は
1.仕事上のストレス
2.人間関係のストレス
の2つに分けて考えられます。
仕事上のストレス
ストレスといっても種類は様々なので、細かく分類します。
長時間労働・休日への不満
長時間労働や、十分な休息がないと、体力・精神面ともに疲弊してしまいます。
疲労が蓄積すると、集中力やモチベーションまで低下し、生産性が落ち、ひいては退職・より良い環境への転職につながります。
仕事内容のミスマッチ
入社前に思い描いていた仕事ができなかった、また、会社が求めいていたスキルと本人のスキルが合わないなど、入社後にギャップが生まれ、早期離職につながっています。
キャリア形成が描けない
リクルートマネジメントソリューションズによる「2021年 新入社員意識調査」によると、仕事をする上で重視したいことトップ3は「貢献(31.3%)」「成長(29.9)」「やりがい(20.7%)」となっており、
「このまま会社にいて、私は会社に貢献できるのか?」
「このまま仕事を続けても、自分が成長できる気がしない。」
「今の仕事にやりがいを感じない」
など、キャリアパスを描けないと、早期離職につながってしまいます。
社風・社内ルールがミスマッチ
入社前に思っていた会社の雰囲気や働き方と、入社後のイメージにギャップが生じると、早期離職につながってしまいます。
人間関係のストレス
職場の人間関係が望ましくないと、早期離職に繋がります。
どんなに仕事が楽しくて、お給料を十分もらっていても、同僚や上司との関係がうまくいかないと、精神的にもたなくなり、退職してしまいます。
離職率の改善方法
十分な休息が取れない・キャリアパスが描けない・好きな仕事ができない・人間関係がうまくいかないなどの理由が主な早期離職の原因でした。
では、どう解決すれば良いのでしょうか。
前章で述べた原因が、なぜ起こるのかと、解決策を合わせて説明していきます。
長時間労働の原因と解決策
原因
労働時間の管理がされていない、人手不足やそれによる業務過多、長時間働くのが良いとされる社風などが原因として考えられます。
解決策
勤怠管理システムの導入、業務効率化ツールの導入、評価制度の見直しを行い、改善していきましょう。
仕事内容のミスマッチの原因と解決策
原因
2020年3月13日に公開された、「若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ(労働政策研究・研修機構)」によると、以下の理由により、企業と就労者間でミスマッチが発生しています。
解決策
採用時に、会社を良く見せようと見栄をはったり、どうしても入って欲しいからと求職者の言って欲しそうな事を言うのではなく、企業のありのままの情報を伝えるようにしましょう。
また、求める人材に関しての情報を、なるべく細かく言語化し、面接官の間で認識に違いが出ないようにしておきます。
また、社内において、会社全体が目指す先と現場の意識を統一しておくことも大切です。
>人を動かす経営者の仕事は、考えを言語化して伝えることそのもの も合わせてご覧ください。
キャリア形成が描けない原因と解決策
原因
上司が業務過多で教える時間を取れなかったり、属人的なのでお互いに助け合えない=教える人によって言っていることが違う、現場主義なので研修を行わない、仕事ができない事を迷惑で、お荷物だと思うなど、社内の労働生産性の低さや、仕組みがないことが原因で、新人の教育やフォローが十分にできず、新人は会社での未来を描けなくなってしまいます。
よって、いつまで経っても成長できないので、会社に貢献できていないと自信を無くしたり、やりがいを感じることができなくなっていきます。
解決策
従業員を成長させるマネジメントの仕組みを作っていきましょう。
また、仕事に対する考え方やキャリアプランを吸い上げるような、定期ミーティングをすることも大切です。
社風・社内ルールにミスマッチが起きる原因と解決策
原因
・スキルだけ重視して採用したので、社風とそぐわなかった
・採用時に、イメージを良く見せたいがために、実際とは違う社風を伝えていた
・社内ルールが社風につりあっていない
・社風、ルールが時代錯誤である
などが理由で、入社後にギャップを感じ、ミスマッチが起きてしまいます。
解決策
ミスマッチを防ぐために、あえて面接のステップを多く設けたり、入社前に座談会を開くいて社員と会話をさせる、社内ツアーを行うなど、入社後に「なんか違った」と思わせないよう、認識のすり合わせをきちんと行いましょう。
また、社風や業務にそぐわない社内ルールも問題です。
一度見直してみましょう。
>組織化には社内ルールが重要!作り方や注意点を徹底解説 も合わせてご覧ください。
人間関係のストレスの原因と解決策
原因
入社したての人は、先輩社員よりも圧倒的に成功体験が少ないので、社会人としての自己肯定感が低いことが多いです。
そこへ、高圧的な態度で注意したり、感情的な声で怒ってしまうと、精神的に傷つけてしまう可能性があります。
解決策
所属する上司とは別に、年齢や社歴の近い先輩社員を「メンター」としてつけましょう。
上司には質問しづらいちょっとしたことへの対応や、精神的なサポートを行います。
従業員満足度をあげることが一番大切
以上、早期離職の主な原因と解決策を説明しました。
ただ、一般的な退職理由をもとに対策を講じても、根本的な理由がわからなければ無駄な労力となります。
辞めない体制を作るではなく、従業員満足度をあげることが一番大切です。
定期的に匿名のアンケートや定期的に従業員のストレスチェックを行って、従業員が何に不満を持っていて、どのような考えで仕事をしているのかを把握しましょう。