小さな会社の新人教育 ~業務内容を新人に記録させる教育効果~

社員研修/教育
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2種類の「新人」

会社で「新人」とは初めてその会社に入社した人を意味します。
一言に「新人」と言っても、実は2種類の「新人」に分けることができます。

1.新卒入社の新人
高校・専門学校・短大・大学などの学校機関を卒業したばかりの人

2.中途入社の新人
学校を卒業し既に社会で働いた経験のある人

3.それぞれのメリット・デメリット
この2種類の「新人」を教育するには次のようなメリット・デメリットがあります。

教育メリット 教育デメリット
新卒 ・余計な概念が無く、自社独自の
教育を素直に吸収できる・教えたことを素直に実行しやすい
・教えることが多く、即戦力になるのに5年前後の時間が掛かる

・指示待ちが多く自主的に動けない

中途 ・社会経験があり、即戦力として
活用しやすい・教えることが少なく、自発的に行動しやすい
・以前の会社のルールや固定観念に引きずられることが多く、今の会社の意図を誤解して認識することがある

・自らの判断で仕事の判断を行い上司の意図と異なる行動をしやすい

どちらの新人教育にもメリットとデメリットがあり、それを踏まえた教育を考えることが重要です。

教育とは

教育とは「教える」という意味と、「育む」という意味があります。
この2つの異なる意味を理解しておくと、教育の取り組み方が見えてきます。

1.教える

教えるとは、相手が知らないことに対して、新たな知識を与えたり、物事の捉え方を解説することです。
例えば、新卒入社の人に真っ先に会社の存在意義やどのような思いで仕事に取り組むのかは教えますよね?

これは仕事に対する考え方、判断基準を知って欲しいという意図ではないでしょうか?
仕事に対する物事の考え方、判断の仕方となる会社の基本情報は「教え」、伝えていきます。
経営に必要な資源はヒト・モノ・カネ・情報です。
このモノ・カネ・情報を使うのはヒト(社員)で、使い方の判断基準が経営理念や社内ルールになります。

この判断基準の解釈の仕方を教えることなく、新人の判断基準に委ねてしまうから、経営者は「思った通りに動かない」と悩まれるのです。

会社の中で教えることに強化することは、経営理念の解釈や社内ルールについてです。
この2つは会社の考え方、仕事の取り組み方、姿勢を示すものです。
この部分を社員独自の解釈に任せ、仕事を我流で取り組ませていては、いつまでたってもあなたの望むような仕事の仕方はしません。

とはいえ、何を教えたらいいのか悩まれる方もいらっしゃいますよね。

教えるPointは「5W3H」です。

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この5W3Hをベースに、あなたの会社の判断基準で仕事できるよう「教え」ます。
教えるには、入社後3ヵ月間は、毎朝10分程度の時間を取り、考え方について誤った解釈にならないように、経営者や先輩社員が導いていきましょう。

2.育む

教えてもらったことを、教わった人(新人)が自分で取り組み実践し、自らの体の中に蓄えていくことを意味します。

教えたことはすぐには身につきません。
何度となく自分自身で行動し、取り組んでみなければ、習得できないことです。

新卒入社の方は、「社会経験がない」ということで、「教え」⇒「育み」が連動していることがあります。

教わったことを即実行することで育みがしやすくなります。
しかし、中途入社の人は「他社である程度知っているだろう」と思われ、ほとんど「教え」がありません。
即仕事を任され、仕事をしながら「育み」を体感します。
しかし、他社の経験は、あなたの会社で通用することは殆どありません。

中途入社の方が、手探りで時間をかけて行った仕事も、「やり直し」になるケースも多いです。
結局、作業時間を含め様々なロスとムダが生まれます。
最も効率の悪い教育の仕方です。

「育み」当事者が行わないと成長できない要素です。
しかし、その前提条件として、仕事の取り組み方や、判断基準などの共通認識があってのことです。

「育み」は仕事を通して社員を成長させることですが、あくまでも経営理念の実現や社内ルールを基に取り組むことです。

「教え」を省略しても「育み」を省略しても、社員は成長できません。

教育も仕組みで考え、いつどのタイミングで何を教えるのか、計画を立てておくことをお勧めします。

新人教育を行う順番

一般的な新入社員教育にはビジネスマナー・電話応対・敬語の使い方などが挙げられ、外部の講師に委託して教育を行うことが殆どです。

私も大手企業から中小零細企業向けにビジネスマナーや電話応対などの研修講師を担当してきました。
その実績から申し上げると小さな会社にとって、このような外部研修を社内で実践できる比率は非常に低いです。

特に新卒向けに行われる外部研修は、一般論としての内容が多いため、学んだことの99%は社内に戻っても活用ができません。
結果、社内で一から教育をし直すことになります。

であれば、自社の業務に特化した独自の社内ルールとして教えてしまった方が、育成時間が短縮でき、教育効果も表れやすいです。
これは、新卒で入社した人だけでなく、中途で入社した人に対しても同様に考えます。

中途入社の人は、他社での仕事の実績が評価され採用に至ります。
そのため即戦力としての期待が高いのですが、実際に業務を行うと「前職の癖(他社のやり方)」が強く、あなたの会社のやり方ではない方法で、仕事を行うことがあります。
多分仕事のオペレーションとしては差異がないのでしょうが、チェック方法や細かな作業の差異が生まれミスやトラブルに繋がるケースも多発します。

そこで、どのように実績がある中途入社の人でも、あなたの会社に入社したのであれば、一からあなたの会社について教育をしなおす必要があります。
このことは採用時に明確に伝え、入社後に再教育を受けることを同意してもらいましょう。

もし、再教育に同意が得られなければ、その方の入社は見送った方が良い方です。
どのような実績があっても、新たな会社のルールに従えない方は、経営者にとってマネジメントが難しい人でしかありません。
ここは採用のボーダーラインとして押さえておくと良いでしょう。

私がお勧めする新人教育は次の順番で教えることをお勧めします。

1.経営理念
会社がどのような思いで経営を行っているのか、MissionやVisionについて教え、会社の考え方(あり方)を学んでもらいます。

2.社内ルール
社内で仕事をするためのルールです。
出社してから、退社するまでの社内での過ごし方(挨拶、清掃、ものの使い方)などです。

この、経営理念とルールは少し時間を取って、解説を交えた「教え」を行います。

3.業務の取り組み方

①事前に仕事の流れを自己学習する。
例えば01組織クラウドの機能にあるワークフローやマニュアルなどの仕事の流れがを記載している資料を見てもらい予め取り組む内容について自己学習をしてもらいます。
この時、新卒入社の新人は仕事の用語や、所作(電話の取り方、名刺交換)などが分からないことがあります。
不明点はメモなどさせて、後で確認するように伝え、自己学習を行わせます。

②仕事の所作について自主トレ
いわゆるOJTです。
仕事の練習を自分で行います。
例えば来店したお客様に対する対応の仕方のロールプレイングや、名刺交換、電話応対、メールの返信など、経営者や管理職の人をお相手に自主トレの成果を見てもらいます。
もし、この時点で考え方や動きに差異があれば軌道修正し、再度自主トレを行わせます。

私が教育支援を行った企業様では、この①②は1仕事単位ごとで、午前中に行い、午後から実際にお客様をお相手に対応させています。
この様子を動画に記録し、01組織クラウドのように社員全員で共有できるようにすれば、更に今後の教育教材として使えますね。

業務対応が良い人が出てきたら、その方の動画に切り替えることで業務スキルもどんどん向上します。
このような工夫を行えば、育成時間が短縮化でき、経営者の負担も軽減できます。

③仕事の記録
新人にとって最も大事なことは、自分の行った仕事を後で確認できるようにすることです。
過去の新人教育ではレポート用紙などに記録をさせていましたが、昨今では01組織クラウドのように社内で共有できるように、データで作成させパソコンに保存することもあります。
個人的には、新人が行った仕事の手順はワークフローやマニュアルに追記させることをお勧めします。

人の学びは自ら実践し、文字化することで理解力が高まります。
新人は、社内の誰よりも時間的余裕があり、仕事に対する情熱を持っています。
その熱い思いをパソコンに入力してもらうことで、仕事の可視化を進めることもできます。

この業務の取り組みは「育み」の部分です。
自分で必要な知識を習得する学びを行い、自ら実践する内容です。

ただ、前提条件として、01組織クラウドにもあるような業務のワークフローやマニュアルが可視化されている状況でなければ、新人自ら「育み」の行動が取れません。

教育時間を短縮化するためにも、業務内容は誰が見ても分かるように文字化しておきましょう。

業務内容を新人に記録させる教育効果

新人を短期間で育成し、活躍を求めるのであれば、「教える」内容と「育む」内容を明確に分けます。
「教える」内容は、必ず記録させ、後で読み返しができるようにします。

このような取り組みをすることで、次のような4つの効果が得られます。

1.育成時間の短縮化

経営者が人材育成に悩む最大の理由は「なかなか仕事を覚えてくれない」ことではないでしょうか?
しかし、この悩みを抱きながら、社員に説明した内容を記録するように指示をしたり、強制的に書かせるようなことはしていません。
現代の産業の中で、見て覚える、一度聞いて覚えられるほど単純な仕事はないはずです。
どの業種・業態の仕事でも、取り組むことは無数にあるはずです。
それを一度の説明で全て覚えろというのは、至難の業です。

教えることを一度で済ませたいのであれば、必ず説明内容を記録させます。
この記録作業こそ、育成時間の短縮の近道です。

2.指導力の向上

新人に仕事を教えたのであれば、必ず新人が記録した内容を確認します。
この作業を省略してしまうと誤った解釈で仕事を覚えてしまう可能性があります。

記録された内容を確認し、差異があれば即、その場で修正します。
これも時間が経ってからでは、修正が上手くいきません。
記入した内容をその場で確認し、その場で修正をする。
これも育成時間の短縮化に繋がります。

この説明内容を確認することは、同時に指導した側の説明の仕方や手本の見せ方の良し悪しが浮き彫りになります。
新人の記録内容は、指導者の教えた結果として表れます。

その記録内容に誤りがあるということは、新人が理解できるような表現で説明をしたり、手本を見せることが求められます。
結果、指導力も向上するわけです。

新人の仕事の仕方が雑であったり、手抜きと思われるのであれば、それはそのように捉えられるような指導しかしていないということです。

それを文字で確認することで、指導者側も伝え方や導き方の工夫が行われ、指導力の向上に繋がっていきます。

3.仕事の理解度の向上

人は学んだことを言葉にして繰り返し話したり、文字にすることで学んだことの理解力が高まります。
教えたことを書かせることは、仕事の理解力を高める効果があります。
指導者も自分の学んだことを人に分かりやすく説明するためには、仕事の見直しが必要になります。
新人も指導者もメモ書きのような走り書きの記録でなく、誰でも後で読めるように体系的に整理したフォームに記録させることで、情報がより整理され理解力も高まります。

4.社内のワークフローやマニュアルが作れる

これまで口頭でしか指導していなかったことを、記録させることで、社内のワークフローやマニュアルの土台ができます。
特に誰でも後で読めるように体系的に整理したフォームで記録をすると、よりワークフローやマニュアルとしての活用がしやすくなります。

これまで、社内のワークフローやマニュアルは経営者や指導者が作成すると思い込んでいませんでしたか?

新人が入社したことをきっかけに、新人に業務内容を記録させ、指導者が内容をチェックすることでもワークフローやマニュアルと同様の内容が記録されていきます。
今、社内にワークフローやマニュアルがない方は是非、社員の教育を活用して内容の記録化に取り組んでみてはいかがでしょうか?
教育効果が得られ、社内のノウハウが蓄積する仕組みができます。

このような取り組み際をするには01組織クラウドにあるワークフローやマニュアルのような機能をご利用になると、より効率的で活用の幅も広がりますね。

まとめ

小さな会社が新人教育を行うのであれば、ビジネスマナーや社会人の基礎知識を教えるという枠組みで考えず、「社内の基本ルールを教えること」と捉え、その中にあなたの会社ならではの電話応対、接客応対の基本を教えていくと、仕事の基本を教えつつ業務の基本を教えることができます。

大手企業の真似をした新人教育ではなく、自社独自の新人教育をすることが経費と時間の短縮に繋がります。

新人は新卒入社でも中途入社でもあなたの会社の基本情報は「教え」の段階をとり、仕事の仕方、捉え方に差異が生じないようにしていきます。
その上で、新人自らが自主的に取り組み、自ら知識や技術を習得する「育み」の時間をしっかり確保しましょう。

教えたことを必ず記録をさせ、同じことを何度も説明をしなくてもいいような仕組みをつくっておくことも育成時間を短縮化するカギになります。

新人の育成は経営者や指導者が率先して現場で指揮命令し作業を行うよりも、新人を動かし新人の経験を高めさせる活動をさせることが、最も育成効果が表れます。
その教育効果を更に高めるために、予め新人に業務内容を説明し記録させます。
この記録は、社内で業務を教えるワークフローやマニュアルとして活用することもできます。

様々な相乗効果が得られる取り組みです。

是非、01組織クラウドのようなシステムを活用し、効率よく業務の記録を行っていきましょう。