人材定着率アップ ~誤った職場定着の考え方を改善!企業の求める人材を定着させるコツ~

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人材定着の誤解

先日、01組織クラウドに弊社伊藤のブログがアップされました。

離職率の低さでなく真の意味での従業員満足が高いことを誇るべき

このブログの中で

「離職率が低いほうが良いという何となくの感覚を持っている経営者が多いですが、それは本当にそうなのでしょうか。

大切なことは離職率が低いということではなく、会社としてお客様に対して提供できる価値が増えているかどうか=会社の成長を実現できているかどうかということだと思っています。

お客様が置き去りになってしまったり、会社として成長をしていないのに、社員優先で感情的な仲良しクラブのように会社がなってしまうことはとても危険です。」

とあります。

正に、この通り!!

まず、あなたは社員の職場定着について、どのような目的を持っていますか?
何のために、社員に定着して欲しいと思っていますか?

・社員が定着していると仕事がスムーズだから

・教えないで済むので、指導者のストレスが少ないから

・職場定着していると社員同士が仲良く、コミュニケーションが取りやすいから

もし、このようなことを目的に職場定着を考えているのであれば、正に「成長の無ない会社」になっているでしょう。

社員の職場定着は、会社にとって「求める人材」として成長し、新たな時代を乗り切る人材として活躍することです。
このような会社の未来を担う人材として活躍してもらうには、何年もあなたの会社で仕事をし、経営者の考えや仕事の仕方を理解する時間となる職場の定着期間が必要なのです。

今一度、あなたは何のために社員を職場に定着させたいのか、その理由を整理してみましょう。

職場定着と教育はあまり関連性がない

職場定着をするために、様々な教育が必要だと言われていますが、私のこれまで関わった企業様の状況から社員教育と職場定着にはあまり関連性がありません。

例えば、某大手IT企業ではこれまで、100人単位で社員を採用しています。
その100人単位の社員に6ヶ月に渡って様々な研修を行います。
ビジネスマナーはもちろん、物事の考え方に関する思考力強化の研修やストレスマネジメント、ITスキルを強化するために7種類の資格試験やTOEICなど、本当に多岐に渡った教育をします。
当然、サポート体制も万全で、後輩を直接支援するメンター制度(先輩と後輩が一対になって仕事からプライベートまで何でも相談し合う支援体制)、心のケアを行う産業医の配置など、大手企業ならではの非常に手厚い環境で研修を行います。

しかし、研修が終わった時点で100人中30人(30%)が退職します。
研修後専門部署に配属され、半年間勤務した時(入社から1年後)70人中半分の35人が退職します。

つまり、手厚い教育環境が整っている大手企業で100人の新人が入社しても、入社後1年で65%の人が退職する状況になります。
このような点からも教育と定着率は関連しないと言えるのです。

反面、なかなか社員が辞めず、社員の定着率が高い会社も存在します。
定着率の高い会社の共通点は、社員の教育だけでなく社員のやる気「モチベーション」を引き出す工夫をしています。
社員の定着は教育より、モチベーションとの関連性が非常に強いのです。

人材定着に欠かせないモチベーションの誤解

職場に社員を定着させる要素の1つに「モチベーション」があります。
しかし、社員のモチベーションを高めることは簡単ではなく、多くの経営者の方が悩みを抱えています。

例えば、モチベーションを高めるための、社員教育を行ったり、処遇改善(給与アップや福利厚生、有給整備)をしても、あまり効果がないと感じているのではないでしょうか?
社員のモチベーションは、社員教育・処遇改善では高まりません。
これは、モチベーションの真の構造をご存じない方が取り組んでいる方法です。

社員のモチベーションを高めることとして、最も誤解を生む考え方が「マズローの欲求5段説」です。

マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説とは、アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー(1908~1970)が考案したものです。

人の欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つの階層に分け、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲すると説明されています。

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人の欲は突然向上するよりも、一番下位の欲求「生理的欲求」が満たされることで、次の欲求が生じるように、徐々に欲求が満たされることで自己実現にたどり着きます。
この欲求は「当事者が望むこと」が満たされなければ、次の欲求が生じません。

例えば、職場内でこれまでの仕事の成果が認められ、「役職が上がる」とか、「ベースアップ」という話が出ても、その事を引き受けることで、自分の仕事が増えたり、責任が増すようなことが起きると感じると、「役職が上がる」「ベースアップ」を辞退するということが起きます。

これは現在、自分自身が置かれている「生活の安全性」や「社会的状況」を、仕事を認められるという「承認」を求めることで、この現状が脅かされると感じれば「承認欲求」は高まらないという状況になるのです。

マズローの欲求5段階説は、あくまでも個人における欲求段階を示したもので、これをビジネスに用いても必ずしも有効性が生じるとは言えないのです。

ではなぜ、ビジネスにおいてマズローの欲求5段階説は有効性が生じないのか…
それは、社員の抱く意欲とその意欲を発揮する場が必ずしも一致しないからです。

例えばある社員が「承認の欲求」を抱き、仕事を頑張りたい、役に立ちたいと考え仕事をしても職場の上司から「余計ないことをするな」「言われたことだけ仕事をしておけばいいんだ」と言われ、自分の取り組みを認めてもらえない、求められていない、と感じれば意欲は簡単にしぼんでしまいます。

特に教育を受けて、それを実践したいと思っている時に、その学びを発揮するチャンスが得られない時は、「学んでも何の役にも立たない」と感じ、学習前よりもモチベーションが低下し、帰属意識も急激に低下します。

職場において人材の定着は社員のモチベーションに影響を受け、モチベーションは社員教育よりも、社員個人の意欲を発揮できる職場環境によって高まる性質があるのです。

職場のモチベーションを高める職務特性モデル

職場でモチベーションを高めるには、いかに社員の能力を発揮する機会を作るかが重要になります。

これは1976年にアメリカの心理学者Hackman,J.R.& Oldham,G.R.(ハックマンとオルダム)が提唱した職務特性モデルという理論があります。

職務特性モデルは「仕事の特性は、社員の態度や行動に直接影響を与え、仕事の動機付けににも大きな影響を与える」という考え方です。

仕事の特性とは仕事のスキルを発揮する状況です。
Hackman,J.R.& Oldham,G.R.(ハックマンとオルダム)はこのことを「中心的な職務次元」という言葉で表しています。

1.仕事のスキルを発揮する状況「中心的な職務次元」

仕事をする時に、次のような仕事のスキルを発揮する状況になると、人は仕事に対する精神的満足感を感じやすいと言われています。

①スキルの多様性
例えば受付をしながら施術をして、会計清算をするというような、異なる仕事能力を発揮する機会が多い状況です。

②タスクの一貫性
目に見える形で最初から最後まで仕事に関わることです。
例えば自分で企画し運営するなどの一連の仕事に関わる状況です。

③タスクの重要性
組織の内外を問わず、自分の仕事が他の人々の生活や仕事に影響を与えていることが実感できる状況です。
例えば施術してお客様の体の不調を改善し「ありがとう」と言われる。
相続のトラブルを解消してお礼を言われる。
ホームページを作成しお客様の集客が増えた。
というような状況です。

④自律性
自分で仕事に関する決断ができ、自由で独立性を保った仕事ができる状況です。
これは多くの経営者が社員に求める状況ですね。
作業スケジュールを自分で決めたり、作業の仕方をある程度自分で決められる状況です。

この状況を作るには、仕事の判断基準を知っておく必要があります。
社員教育を受け、仕事の仕方を学ばないと行えない状況です。

逆にどんなに判断基準を学び完璧にマスターをしていても、このように自分の学びを発揮する状況がなければモチベーションが高まりません。
このような点からも、社員教育を行ったとしても必ずしも定着に繋がるとは言い難いのです。

⑤フィードバック
仕事に必要な作業活動を実行した結果、有効性に関する直接、明確な情報を得ることです。
どこが上手くいったのか
どこの部分は工夫が必要なのか

仕事の改善に繋がるよう適切な情報を伝えます。

経営者や管理職の方は、出来ていないことにフォーカスし
「~だからダメなんだ」
「~しかできないのか」
など、「ダメ出し」をフィードバックだと思っている方が多いです。

フィードバックは、改善に繋がる情報を伝えることです。

出来ていることは認め、出来ていないことは「指摘」ではなく
「~のようにしてみては?」
「〇〇を△△に変えてみては?」
など、情報提供をします。

経験の浅い社員の場合、自分自身の経験から改善方法を考えることは非常に難しいです。
仮に考えられたとしても、それが、経営者の求める改善策とは限りません。
社員に仕事の改善を求めるのであれば「ダメ出し」ではなく適切かつ簡潔に、改善へ繋がる仕事の情報を伝えましょう。

2.仕事のスキルを発揮する心が満たされる「精神(心理)状態」

Hackman,J.R.& Oldham,G.R.(ハックマンとオルダム)によると、仕事のスキルを発揮する状況「中心的な職務次元」が満たされれば、仕事に関する満足感「精神(心理)状態」が満たされると言われています。

例えば、自分の考えた企画が実施され、立ち上げから運営まで関わり(②タスクの一貫性)、その仕事の采配は全て自分で決めて行動ができる(④自律性)。
その結果、お客様から感謝の声や関わった他の社員から喜びの声が聞けた(③タスクの重要性)。
このような仕事ができたら、多くの社員は「仕事に対する達成感」や、「自分の仕事は本当に良い仕事だ」という仕事の有意義性を感じるのではないでしょうか。

この「仕事に対する達成感」や「仕事の有意義性」が満たされることで、「より良くしよう」「もっと頑張ろう」という意欲が出てきます。

3.仕事で心が満たされると、モチベーションが高まる「個人および仕事の結果」

先程もご説明したように、「仕事に対する達成感」や「仕事の有意義性」が満たされることで、「より良い仕事をしていこう」「もっと多くの人に喜んでもらえるように仕事を頑張ろう」という意欲が出てきます。

この意欲が「モチベーション」です。
モチベーションが高まれば仕事のパフォーマンス(質の高さ)・仕事の満足度を高め、仕事に対する欠勤・離職率を低下させます。

まとめ

人材を職場に定着させたいと考え、社員教育や処遇改善を行う経営者の方がいらっしゃいますが、その方法では人材の職場定着には繋がりません。
人材の定着は自分自身で「もっと仕事に関わりたい」というモチベーション(意欲)が必要不可欠です。
モチベーションにマズローの欲求5段階説を用いる方がいますが、これはあくまでも個人的な欲求の推移を表したもので、ビジネスで有効とは言えません。

ビジネスで社員のモチベーションを高めるには、社員が仕事に対して能力を発揮する場を用意し、社員の采配で仕事ができるような環境整備が必要です。

その環境整備の参考として、職務特性モデルというスキル発揮する状況を参考にすると良いでしょう。

ただ、職務特性モデルの中で、「自分の考えた企画が実施され、立ち上げから運営まで関わり(②タスクの一貫性)」や「仕事の采配を全て自分で決めて行動ができる(④自律性)」はあなたの会社の中でルール化されていることをベースで実施させないと、思わぬトラブルが生じます。
社員の能力発揮はあくまでも、あなたの会社の仕事を通して行うことなので、「②タスクの一貫性」は、あなたの会社の仕事をベースで行考える必要があります。
「④自律性」の判断基準はあなたの会社の社内ルールに繋がります。

社員のモチベーションを高めるためにも、予め仕事のタスク整理や社内ルールの整備が必要です。

特に、01組織クラウドのように全社員でタスクやルールの共有化が出来ておけば、より自発的に職務特性モデルを発揮する可能性が高まります。

あなたの会社の人材定着にも、01組織クラウドのタスク整理や社内ルールの機能を是非ご活用下さい。