小さな会社の新たな人材育成 『企業内大学』のすすめ

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企業内大学とは

1956年アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社が、組織のマネジメント習得を目的として、世界初の企業内ビジネススクール「ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所」を開設しました。
ニューヨーク州クロトンビルに設立したことから、このビジネススクールはクロトンビルと呼ばれています。
クロトンビルでリーダーシップの育成に効果が生じたことから、アメリカの主要企業で企業内大学の設立に注目が集まるようになりました。

その後、日本の企業でも企業内大学に注目が集まります。
背景としては少子高齢化による、企業の人手不足問題です。
これまでのように企業側が求める人材を選ぶことが難しく、企業が求める資質・スキルには満たない人材も採用する時代になりました。
採用後は企業が求める資質・スキルを育成していくのですが、能力が開花する前に離職するケースも増加しています。
これまでと異なる資質・スキルを持った人材を採用したいのであれば、企業の業務に合わせるだけでなく、新たに採用した社員が活躍できる環境整備も必要になります。

そこで新人だけでなく管理職も一緒に、新たな学びの機会を企業内で作る取り組みが注目されました。

現在日本で企業内大学を取り入れている会社は、日本マクドナルド株式会社、博報堂、ソフトバンク株式会社などがあります。

これまでの社内教育と企業内大学の違い

これまでの社内教育はOJTとOFF-JT、自己啓発の3種類がありました。

OJT

OJT(On the Job Trainingの略)で、職場で実際の仕事を通して指導し、知識、技術などを身に付けさせる教育方法のことです。

ベテラン社員が新人に、仕事をしながら業務に直接関わる知識や技術の習得ができる様に教えていきます。

業務に直結し、企業内で教えるタイミングや教える時間が調整しやすく、日本の企業内教育の主流になっている教育法です。

厚生労働省が毎年企業の「能力開発基本調査」を実施しています。
能力開発基本調査は、国内の企業・事業所と労働者の能力開発の実態を明らかにし、今後の人材育成施策の在り方を検討するための基礎資料です。

厚生労働省では、OJTは年間の実施計画を立てて取り組む(計画的なOJT)を推奨しています。
2020年1月~2020年12月まで7,392企業を対象に「能力開発基本調査」を行った結果、社員数が50人以下の企業で計画的なOJT実施率は34.6%ですが、社員数が1,000人以上の企業で計画的なOJT実施率は77.3%です。

つまり多くの企業では「いつ・何を教えるか」という学びの醸成を考慮した育成というよりは、日々の仕事に沿って場当たり的な教育が行われていることが分かります。

また、計画的なOJTですと、事前学習や自主トレなどの時間が確保できますが、現状はこのような事前知識の習得や自主練習が出来ない状況で現場に配属されます。

入社間もない社員は一瞬の説明で膨大な情報を全てその場で吸収することを求められ、確認するにも資料や手本が無いことが多く非常に高度な学習姿勢を求められる教育法です。

これまでは社員研修が主流でしたが、産業の変化と共に仕事の内容が高度化し、業務をしながら覚えることにも限界が生じています。

OFF-JT

OFF-JT(OFF the Job Trainingの略で、職場を離れて仕事の知識、技術などを身に付けさせる教育方法のことです。

業務に関連するも、ベテラン社員でも教えにくいような専門的な知識や技術の習得を、外部の専門家を講師に招き社内の技術向上を行ったり、外部の機関に出向いて技術の習得を行う時に活用する教育法です。

例えば、業務上で必要となる資格取得や法改正に伴う業務知識の習得などです。

先程の「能力開発基本調査」によると、社員数が50人以下の企業でOFF-JT実施率は48.8%ですが、社員数が1,000人以上の企業でのOFF-JT実施率は82.9%です。

資格取得や法改正に伴う業務知識の習得という教育目的が明確な分、OJTよりも実施率が高いです。

ただ、この数字は調査を実施した7,392企業が対象ですので、OJT・OFF-JT共に小さな会社の実施率は更に低いと考えられます。
(出典:厚生労働省、令和2年度「能力開発基本調査」より)

自己啓発

自己啓発は職場の技術や知識を習得する際、自らの努力で成長しようと取り組むことを意味しており、古くから社員自らの努力によって自己スキルを高める学びの姿勢を指していました。

OJT・OFF-JTは会社が計画し実施してきた教育法ですが、自己啓発は社員が自らのスキルアップを目指して社内外に学びの機会を作ります。

自己啓発は、あくまでも社員の自主性(意志)によって学びが決まります。
ここに、会社として学ぶ項目を指定することはでき難いです。

しかし、社員の自主性によって行われることなので、学びの習得率や満足度はOJTやOFF-JTよりも高いのが特徴です。

企業内大学はこの従来の教育法のいいところを集めた、新たな教育法になります。

小さな会社の企業内大学の実施方法

先程の、企業内大学に取り組んだ企業名を見ると大手企業が多かったですね。

実際、企業内大学を設立する際には膨大な費用が掛かるという記述もありますので、ある程度の資金力が必要と思われます。

しかし、先ほどのOJT・OFF-JT・自己啓発という従来の社内教育法の特徴を活用した取り組みを行えば、小さな会社でも企業内大学は実施できます。

企業内大学の運営メンバーを決める

企業内大学の開催当初は経営者などが主導して、カリキュラムや講師選択の場に参加します。

しかし、最終的には社員が主体的に企業内大学の運営を行っていくことを想定し、運営するメンバーを決めておきましょう。

例えば

・社員に授業日をお知らせする人や、出欠管理をする人

・講師と授業内容を調整する人

・授業の準備や会場、スケジュールなどの調整をする人

など、企業内大学を継続的に実施する人を決めて運営をさせていきましょう。

この役割は年度ごとに交代し、全社員が関わるような仕組みにすることも大事です。

企業内大学のカリキュラムを決める

まずは、「何を学ぶか」というカリキュラムを決める必要があります。

このカリキュラムの内容を「仕事に関連することであればなんでもOK」と社員から学びたいことを公募してみましょう。

経営者が考えるよりも、社員自身が学びたいことを聞き出し、実施した方が参加率も高く学習の満足度が高いです。

社員から学びたいことが集まりましたら、全社員でいつ何を学ぶのか決めます。
例えば、意見が1つしか出なかった場合でも、全社員でいつ学ぶかを決めます。

この様な事を繰り返すことで、社員から学びに関する意欲が高まり、今後自ら学びに関する意見を出すことができます。

会社の風土作りにも繋がりますので、少ない意見でも出てきたことは経営者が決めるのではなく、全社員で話し合い決めていきます。

社員自らの意志で学びのテーマを決めることは自己啓発の要素です。
従来は自己啓発に会社の意見を取り入れることが難しかったのですが、企業内大学の授業を決める際に会社としての意見も言えますね。

ただあくまでも、内容を決定するのは社員に委ねます。
ここで会社の意見を押し通すと、社員の自主性が消えてしまいます。

企業内大学は社員の自主性を活かすことが、教育効果を高めますので、この点は留意しましょう。

日時を決める

学びの内容が決まったら「いつ」実施するのか期間を決めます。
例えば仕事の忙しい繁忙期は避け、比較的時間に余裕が生じる閑散期などで実施すると良いでしょう。

また、実施の時間帯をどうするのかも考える必要があります。
一般的な大学の授業は90分~100分です。

従来の社員研修だと最低でも3時間、長いと2日間~3日間の時間を有します。

しかし企業内大学であれば、この時間も調整できますね。
例えば、毎週〇曜日の朝礼後30分とか、終礼前の30分など、業務時間を考慮した時間設計ができます。

社員が主体で仕事に関わる学びですので、基本は就業時間内で行うように設計します。

社内ではなく外部の講師から授業を受ける場合は、勤務時間外、休日出勤の時間帯で受講する可能性があります。

このような場合は、時間外手当や休日出勤手当・代休処理などを考える必要があります。

このように、学ぶ時期を考えることは計画的なOJTと同じことです。

講師を決める

学びたいことが決まりましたら、講師を考えます。
従来ですとベテラン社員が新人社員に教えますね。

しかし、企業内大学ですと、新人がベテラン社員に教えるという事も出来ます。
例えば昨今、オンラインを使った面談や打ち合わせが増えています。

若手の社員は比較的にスムーズに対応できますが、ベテラン社員は中々上手く使えません。
そこで、企業内大学でオンラインでの打ち合わせの仕方講座を開設します。

毎週月曜日の朝礼後30分×4回講座

講師は、社内で一番パソコン操作に詳しい新人のAさん

1回目:オンラインツールのインストールと設定

2回目:オンラインツールの使い方と参加方法

3回目:オンラインツールを接続しての使い方

4回目:自分からオンラインミーティングを招待する方法

など。

この様なことからでも、自主的な学びの機会を作ることができますね。

ベテラン・新人という枠を取り払い、学びの内容に「詳しい人」「リードしてくれる人」という観点で社員から人選していくと良いですね。

このような学びの機会が生じることで、教える側・教わる側双方に新たな学びが生じ社内の関わり方の変化も生まれます。

もし、社内に該当する人かがいない場合は、取引先に講師をお願いしてみましょう。

大学はオープンカレッジです。
企業内大学もオープンカレッジとして、取引先の方を企業内大学の講座に招待して交流を図ってみてはいかがでしょうか?

企業内大学のことを理解いただいた上で、ボランティア講師または、多少の謝金でお願いできるかなど、交渉してみてはいかがでしょうか?

学び方も社内で実施するのか、外部に出掛けて行うのか、オンラインなのか様々な選択肢が考えられます。

自社以外に様々な専門の仕事をされている取引先と連携し、外部の知識を社内に取り込むOFF-JTが実現できます。

学びのテスト

大学は学びの習得度を測るテストがありますね。
企業内大学でも是非テストを実施してみましょう。

業務に直結する技能テストでも良いですし、少し砕けたクイズ方式で行ってもいいでしょう。
単なるペーパーテストではなく、実技操作などもあると良いですね。

テストについては、講師の方に社員の習得度を測る内容を考えてもらいましょう。

学びはアウトプットすることで、より学習効果を高めます。
学ばせたままにせず、どのように習得したかを測る「テスト」があることで、真剣度が増します。

このことが、結果的に社員のレベルアップの後押しになります。
テストの内容にもよりますが、このことを社内評価の一部に取り入れても良いでしょう。

企業内大学実施の留意事項

小さな会社にとって、企業内大学の運営は様々なメリットが生じます。
その反面、実施の際は次のような点に留意が必要です。

社内コミュニケーションを円滑に行う

カリキュラムや実施日を決める際に全社員の意見を必ず取り入れます。
企業によっては、年長社員の発言が強く、それに従ってしまうような風土があると、若手の意見が通り難くなります。
このような状況では社員の主体的な活動に繋がりません。

一部の社員の発言が強い場合は、無記名アンケート、無記名投票などを用いて誰の意見かわからなくするなど、全社員の率直な意見が反映されるような工夫をしましょう。

継続的に実施する仕組みを作つくる

特定の人だけが関わることのないように、全社員が継続的に関わる仕組みにします。
その為に全社員が参加したいと思えるカリキュラムを考えることや、特定の人だけが運営に関わり負担感が生じないよう配慮が必要です。

勤怠に関する配慮

先程も述べたように、企業内大学は社員のスキルアップを目指した自主的な業務教育活動です。
よって、実施に関しては就業時間内で行う事を基本として考えます。
もし、就業時間外に実施することがあれば、それは時間外・休日出勤手当や代休処理などを行う必要があります。

このことを考慮しないと強要と捉えられ、場合によっては「パワハラ」と言われるかもしれません。

これでは、せっかくの活動もマイナスになります。
企業内大学の実施については、勤怠を熟考して取り組みましょう。

講師選択

講師を選択する際、社内や取引先など、身近な「凄い人」「専門家」を選択されることをお勧めします。
ただ、それでも適材の人材いなかった場合、講座を取りやめてしまうと社員のモチベーションが低下する可能性があります。

このような場合こそ、社員にどのように運営するか決めさせましょう。
例えば自費で参加費を支払ってでも講師を呼びたいというケースもあります。

講師の選択は社員に一任し、出来る限り経営者の意向は挟まないように留意しましょう。

ただ、取引先以外の外部講師を選ぶ可能性があります。
例えば、人気YouTuber(ユーチューバー)とか、投資家とか…
企業内の機密事項に触れる可能性もあり、見知らぬ講師を社内入れるには少々リスクを考えておく必要がありますね。

予め講師の身元確認や実績確認、インターネットの口コミなど講師選びのガイドラインを社員と共に作っておきましょう。

まとめ

企業内大学は、小さな会社にとって新たな社員の能力開発の機会として多くのメリットが生じます。

・社員が主体的に学びの機会が作れる

・指導者がベテランだけでなく新人社員でも行え、社内コミュニケーションの活性化が図れる

・取引先も巻き込んだ教育活動が実施できる

・身近な社員や取引先を講師にすることで低コストで実施できる

・学びを確認するテストで社員評価としても活用できる

など。

この企業内大学は全て01組織クラウドの機能をご利用頂き簡単に実施が出来ます。

学びの内容を自社の教材として登録できます。
その様子を動画としても残しておけます。

タスク機能を使えば、習得状況の把握やテストの成績も把握できますね。

小さな会社で企業内大学の取り組みをご検討の方は、是非01組織クラウドをご利用下さい。