小さな会社の社内大学設立方法~新たな人材育成の取り組み~|実施・見直し編

社員研修/教育
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社内大学を設立するには、8つのStepのStep1〜Step5までの準備編の続き、実施・見直し編をご紹介します。

社内大学を設立する取り組みのStep1〜Step5までで社内大学の運用の仕方、カリキュラム内容や実施時期を決めることができました。

ここまで決まれば、あとは実際に行うだけです。
ただ、社内大学で学んだことを確認することが重要になります。

実施は講座を行う事というより、講座の内容を測る「評価」が重要になってきます。

実施・見直し編では、評価方法からお話ししていきます。

Step6:評価の仕方

評価とは教えたことが理解できているのかどうか、学びの習得状況を確認することです。
学びの習得状況を測るためには物差しが必要です。
社内大学の学びを測る物差し「評価基準」を考えていきます。

評価基準を考える

社内大学の評価基準は日々の業務で指導していることです。
その指導した結果を目標にし、指導したことが結果として現れるかどうかを測ります。

社員を評価する際、社員の能力や人となり、その他業務上で行って欲しいことができているかどうか、様々なチェック項目で社員を評価する会社があります。

しかし、50人前後の小さな会社では、社員の行動変化は目で見て確認することができます。

例えば

  • 最近仕事が早くなった
  • ハキハキ話せるようになった
  • お客様との接客がスムーズになった
  • このように、指導した結果は社員の行動に表れます。

そしてこの結果は、経営戦略を踏まえた会社の目標達成につながります。

育成の目標を経営戦略上の目標と一致させることで、社員の成長が会社の成長に繋がり、評価もシンプルで行いやすくなります。

例えば、電話応対が出来なかった人に社内大学で電話応対が出来るように自主学習と指導を受け、実践してもらいました。その結果「電話応対ができるようになる」という行動が確認できるようになりました。
しかし、単に「電話応対ができるようになる」という状況と社内が求める模範的な「電話応対ができるようになる」という状況は異なります。

この違いを示すためにも評価の基準を明確に示しておくことが大切です。
その評価の基準も特別なことではなく、日々業務上で指導をしている事をそのまま評価基準として用います。

例えばこの会社の模範的な電話応対の基準として次の内容があったとします。
電話が鳴ったら2コールで取る

    • 明るく、大きな声で電話に出る
    • 用件を聞き洩らさずにメモを取る
    • 復唱して聞き洩らしが無いか確認できている
    • 最後に自分の名前を名乗りお礼の言葉が言えている

このことに該当しているかどうかを確認するだけで、社員のスキルは測れます。
会社にとって望ましい行動・態度、商品サービスの提供度、製品の完成度を目指して仕事に取り組んでもらうように指示をすれば、おのずと会社の業務レベルは高まります。

反面、評価基準が明確でないと次のようなことが起きます。

ある社員の方から

「私は言われた通りに仕事を頑張りました。自分なりに工夫して仕事をしていました。
それなのに、なぜ自分は評価されないのですか。」

と異論が出ました。
この様なときに、評価の基準が明らかであれば、例えば電話応対の基準を用いるのであれば、

「確かに工夫して電話を取っていてくれますが、用件を聞き洩らさずにメモを取ることができておらず、伝達ミスが多いです。更に、最後に自分の名前を名乗りお礼の言葉が言えていないので、印象が良くありません。よって会社としては評価できないのです。」

と明確に説明が出来ます。

社員が発した評価に対する異論は、真摯に回答をしないと社員との信頼関係にも影響が生じます。
最悪の場合、離職に至ることもあります。

何を評価の基準にしているか、経営者だけでなく社員に対しても明確に示し、その評価をするために仕事の取り組み方や、目指すことを一致させておくことが重要になります。

評価基準も色々な角度で考えることができますが、仕事の覚え方のマインド・知識・技術の3項目で考えるとまとまりやすいです。

評価の段階を決める

準備編でご説明した通り、仕事を覚えるには段階がありました。経営者として全社員に目指して欲しいことは「発生的認識論」を引用すると仕事を覚える段階の4(学びを応用する段階)です。

しかし、社員の社歴や仕事に対する能力に差があり、一気に全社員がその目標を達成するのは難しいでしょう。
そこで仕事を覚える段階に応じて目標と評価も段階をきめます。

例えば、整体の会社で「お客様が来店した時、必ずサプリメントの購入を促す」という業務の目標があったとします。
しかし、入店間もない社員にとって、「サプリメントの購入を促す」という業務目標はハードルが高いです。

そこで、評価の基準も仕事を覚える段階を参考に段階に応じて決めていきます。

例えば

  • お客様にサプリメントの名前と特徴を言うことができる
  • お客様に応じて、サプリメントの説明を変えて話すことができる。
  • お客様がサプリメントを購入したくなるような会話ができる
  • お客様へサプリメントの購入を促すクロージングができる

など、小さな会社の社員評価は、会社の目標設定に対して、日々の業務の取り組みと到達度で評価する基準を作ります。

この目標の積み重ねが、結果的に社員の成長であり会社の目標達成に繋がります。
小さな会社は社員の良し悪しを評価するのではなく、会社の経営目標に近づく行動が出来ているかどうかを評価基準として考えます。

仕事を覚える階段ごとに目標を作り、その目標ごとでできたか出来なかったという評価を作ります。

出来る限り、日々の業務を通して社員の成長が測れるような評価基準を作ります。
しかし、このような評価基準だけでは測りきれないこともあります。

例えば経営理念の理解度や、仕事に対する意欲などは日々の業務に取り組む姿を見ても評価がしにくいでしょう。

このような業務の取り組みだけでは測れないことについては、社内試験を実施して確認します。

社内試験の作り方

社内試験は、日ごろの業務スキルの定着度合い(業務スキルの再現)を確認したり、複数の支店を持つ全社員の業務水準を測るときに実施します。

社内試験は知識を把握する試験と技術を把握する2種類があります。

知識を把握する試験

仕事をする上で必要な知識力があるかを把握する試験です。試験の方法は問題を作り答えを書かせる、小論文で考えを書かせる筆記試験があります。
筆記試験だと問題を考えたり採点をするのに時間が掛かるのが大変と思われるのであれば、口頭で質問したことに説明をさせる方法もあります。
例えば、「当社の経営理念を考えるきっかけになった出来事は何か」など、あなたの会社の中で知っておいて欲しいこと、これだけは覚えて欲しいことを質問します。
この他、テーマに沿った提案をするプレゼンテーション試験などもあります。
仕事上で必要な知識を有しているかどうかを確認する試験です。
方法はあなたの会社の状況によって選択すると良いでしょう。

技術を把握する試験

仕事で必要な技術の定着度を測る試験です。例えば接客応対、クレーム対応、施術、プログラムのバグ発見、見積書作成、指定書類の作成など、経営者が社員の技術度を確認したものをテーマにして実施します。

例えば、整体を経営している会社で社員の接客スキルを把握したいと考えた場合、
ロールプレイングの実技試験を行います。

ロールプレイングの実技試験は、スタッフ役(受験者)とお客様役(試験管)に分かれて行います。

スタッフ役、お客様役双方には次のような設定カードを渡します。

《お客様設定》
・50代女性のお客様
・2か月前から週1回で通っているが、肩こりが改善されない
このようなお客様にどのように接して施術を提案するか

というような内容が書かれています。

そして、日々業務で行っている接客を経営者や試験官の前で行い技術を把握します。
この時の評価基準は日頃業務で指導している内容を用います。

例えばこのお店では、上記のようなお客様がいらっしゃった場合は、次のことを必ず聞くように指導をしているとします。

・日々の生活について話が聞き出せている
・施術後の行動について聞き出せている
・食生活について聞き出せている
・話を総合し、お客様の課題点を特定したうえで明確に説明が出来ている
・課題を改善するための日常生活の過ごし方を提案している
・施術を行うメリットを伝え施術の提案が出来ている

この内容を評価の基準にして、実際に行えるかどうかを把握します。
社内試験だからと言って、新たな取り組みをするのではなく、日々の業務で教えていることが実施されているか(再現できるか)という視点で評価を行えば良いのです。

接客や営業モノづくりの仕事だけでなく、事務の仕事も会社が求める処理時間内に、作成基準を満たした書類作成ができるかどうか測る実技試験を作ることができます。

社内試験は特別な取り組みではなく、日々教えていることが身に付いているか書面や実技で確認することです。
日々の業務の延長線で経営者が確認したいことをテーマに実施していきます。
試験は年に1回でなくても良いです。
社員数や仕事の特性に応じて開催時期は考えていきましょう。
社内試験は、社員のスキルアップだけでなく、モチベーションアップの効果も生じます。

社内試験の結果を考える

社員の知識や技術の習得度が把握出来ましたら、社員にどのような処遇を行うのか考えます。例えば昇給をするとか、役職を付与するなど、できるだけ社員のモチベーションが高まることを考えます。

近年では、役職や昇給という処遇よりも、特別夏季休暇や一定の期間だけ時短勤務を希望することもあるようです。
社内試験の結果に対する処遇も時代によって変わってきています。試験結果の処遇は経営者だけで考えず社員の意見も取り入れて考えると良いでしょう。

処遇を考えて良く際、社員の社歴や能力を考慮すると同じ処遇にすることが難しい場合があります。
例えば、社内試験を行い会社の規程を満たした人には昇給を与えるという規定を作ったとします。評価の階段を用いて、入社1年目から3年目の社員に対する段階的な目標を設定し、それが達成できたとしても、会社からすれば「出来てあたりまえのこと。この試験で行った知識や技術がなければ、更に高度な仕事を教えられない。」ということがあります。

社内試験を行うのは、あくまでも社内の標準知識と技術を有しているかを確認することであり、その標準知識と技術を有していることが確認できて、やっと本質的な仕事を覚えるスタートラインに立つという場合があります。

この様な場合、昇給や役職というような処遇ではなく別の処遇を考えます。

例えば、入社1〜3年以内で仕事の基礎知識と技術を「ベーシックスキル」と呼び、習得する試験を実施します。
入社1年から3年目のという年数内にも経験値の差が生じますので、それぞれの年数を考慮し知識・技術の違いを示す社内資格を付与します。

試験を次のように分けます。

・ベーシックコース  ブロンズ(入社1年目向け初級)
・ベーシックコース シルバー(入社2年目向け中級)
・ベーシックコース ゴールド(入社3年目向け上級)

そしてベーシックスキルの規程として「ベーシックコースのゴールドを受講後、ゴールド資格が取得できたら、会社の基本スキルの習得が行えたと認め次のLevelに進むことができる。この後のLevelからインセンティブが発生する。」
というような内容を取り決めておきます。

業務の性質上、入社間も無い時はインセンティブを発生させない方が、社員の意欲が高まり学びのサイクルが作りやすい場合があります。
この様な場合は、インセンティブが無くても資格などの別の承認を示すものを用意し、社員の努力を承認する方法を考えます。

あなたの会社ではどのような試験を行い、どのような結果を示す基準を作りますか?

カリキュラムの内容を参考にしながら、試験方法と、その結果の示し方を考えてみましょう。

Step6まとめ

日々の業務で教えたことが、どのくらい習得しているか把握することが評価の目的です。

仕事に対する良し悪しをジャッジすることが目的ではありません。
日々の業務で教えたことを業務を通して把握できる評価がある一方で、日々の業務を通して把握しづらい評価もあります。
目に見えにくいスキルを把握する場合は、社内試験を実施して測ります。
社内試験は社員の成果に対するこだわりを高め、社員間のスキル向上に効果があります。
社内試験も日々の業務の中で経営者が把握したいスキルをテーマに考えて行いましょう。

Step7:育成内容の見直し

社内大学の設立準備を行い、カリキュラムを考え講師選択、実施、評価までの取り組みが行えたら、振り返りを行います。
導入した初年度は様々な気づきが生じます。

社内大学を開始して、翌年を迎える前に学習内容・評価基準を見直しましょう。

見直しは、小さな会社であれば全社員で行います。社員数によって、全社員が関わるのが難しい場合、年齢・社歴・性別を問わず、無作為に選出し社内大学見直しプロジェクトを立ち上げ、そのメンバーで見直しを行います。

経営者も見直しメンバーとして参加します。ただし、経営者はあくまでも会議の内容を聞き、決断が必要なこと(予算、期間)などの話が出た時、助言的に意見を発言するにとどめ、できるだけ社員主体で運営できるように、見守りに徹しましょう。

社内大学見直し

社内大学を見直すPointは4つあります。

1.運営方法

社員の参加の仕方、試験の告知の仕方、試験の結果報告大学を運営をする方法などを見直します。小さな会社であれば、全社員で持ち回りで役割を担当します。このような運用を行う中で運営する際の費用や、運営ルールなどが現状で良いのかどうかを見直します。
現状よりもよりスムーズに社内大学が運営できる方法を考え見直していきます。

2.カリキュラム内容

社内大学のカリキュラムは、経営目標に沿って社員が成長に至り、未来の学びを想定した教育内容を考えました。
この内容が果たして適していたかどうか見直します。

場合によっては、取りやめた方が良いカリキュラムがあったり、新たに新設した方が良いカリキュラムが出てきます。
会社の業務内容や社員の能力状況を考えながらカリキュラムの見直しを行っていきます。

3.実施時期

社内大学は経営計画に沿って育成計画を作成しました。
繁忙期に知識習得をするのではなく、繁忙期で能力を発揮するように計画しましたが、その時期が果たして適切だったかどうか見直します。
例えば例年だと6月が繁忙期でこの時期に学びが多くなることを避けて実施時期を考えました。しかしお客様の業務の変更で7月は忙しく、予定していた社内大学の学びも十分に受けることが出来なかったとします。

社会の変化や経営戦略上の理由で社内の業務スケジュールが変わっていくことが想定されます。実施時期は、次年度の経営戦略やお客様の仕事の動きなどを予測し、落ち着いて学びに至れる時期を考えて設定します。

その為にも毎年実施時期の見直しを行っていきます。

4.講師の見直し

1年間関わった講師について見直します。
全社員に対して講師のアンケートを取り、再度受けたい講師、受けたくない講師など講師に対する評価も行います。
実施時期と同様、社内大学で学ぶカリキュラムも社会の動きや仕事の変化によって変わってきます。
その学びを得るために最適な講師かどうか、見極めることが重要です。

会社によっては社内試験で上位の成績だった人に講師をさせるというルールを作っているところもあります。
社内の講師になることをモチベーションに仕事を頑張る人もいるでしょう。

講師も毎年選び直しをする仕組みにしておくことで、講師のマンネリ化やスキルの低下を防ぎ、常に会社にとって必要な学びを提供することができます。
この様な取り組みが悔過として全社的なLevelupに繋がります。

講師の選び方も自社の業務内容を考慮して見直していきましょう。

Step7まとめ

社内大学が運営されても2〜3年は修正が必要です。
初年度から100%の完成度で実施することにはならないからです。

社会の変化によって自社の仕事そのものが大きく変わる可能性もあります。
社内大学のカリキュラムや運営ルールは1度作成したら終わりではなく、毎年見直し、徐々に完成度を高めていきましょう。

また、この見直しをすることで社員の意識に変化も生じます。
社員を中心に取り組める仕組みを作っていきましょう。

Step8:経営計画と共に新たな育成

PDCAサイクルを作る

社内大学の運営に関する見直しが出来ましたら、最後に経営計画とすり合わせを行います。
人材の育成は会社の資産作りです。
その資産をいつ、どのタイミングで、どのように経営に生かすかは、経営計画を元に考えていく必要があります。

社会の変化と共に、社員に身に付けて欲しいことは変わっていきます。
その変化に対する未来予測から新たな教育内容を考えること、社員が学んだことを発揮させる仕事の機会を作ることは、経営者しか考えることができません。

新しい期を迎えるために作成した経営計画書の目標と社員の評価内容があっているのか見直していきます。

例えば

  • 実施する時期や回数の計画は適切なのか?
  • 運営体制に問題は無いか?
  • 教えたことを確認する評価の仕方、試験の仕方や実施時期に問題は無いか?
  • 見直して無くすこと、取り入れることは無いか?

などです。

人材育成も経営計画と同様、PDCAの視点で考えていきます。

特に経営者が新たに考えた経営戦略に基づいた経営計画を実現できる人材が、この社内大学のカリキュラムで実現できるかどうかも見極めます。

ある程度、社内大学が定着するとカルチャースクールのような講座も出てくることがあります。
社員の息抜きや社内コミュニケーションの向上を目的にすることがありますが、それが本当に会社の利益に繋がるかどうかを見極めることが重要です。

本当に今期で取り組むことなのか、次年度または更にその先で行えないのか、社員の成長に繋がり会社の成長にも繋がるPDCAサイクルになっているのか、経営者の視点で確認をしましょう。

Step8まとめ

経営戦略に沿った経営計画書は社内大学を作る上でも重要なものです。
社内大学の教育内容を決め、評価基準の土台にも使えます。
ただし、社会の変化によって経営計画が変わるように社内で求められる社員の能力も年々変化します。

社内大学は一度作ったら終わりではなく、経営計画が変わる度に見直していくものです。
経営計画書を作成する際、PDCAサイクルを考えますが、同時に人材育成でもPDCAサイクルを考え、自社の成長をもたらす社員像を整理していきましょう。